2025 年 08 月 26 日
eシールと電子署名の違いとは?
~コスト削減と電子文書の信頼性担保、顧客ニーズへの対応 ... 組織が抱える課題を解決~
はじめに
重要書類や組織間取引において、印鑑が有する法的効力から押印が重要な意味を持ちます。業務効率化やコスト削減を目的に書類の押印を廃止し、DX を進める企業が増えていますが、電子取引ではその文書を「誰が」発行したものなのか、真正性の確保がとても重要です。偽造対策が不十分なために紙による " ハンコ文化 " が一部残り、紙の書類と電子データの両方で管理する手間や、業務効率化への課題を抱えているケースは少なくありません。また電子化した場合でも、書類の種類に応じて適切な判子(ハンコ)を使い分けるように eシールと電子署名を使い分ける必要があります。
前回「2025 年運用開始、組織印の電子版「eシール」とは?」で解説したように、従来デジタル化が難しかった、「押印が必要な証書等の発行業務」の DX に eシールの利用が期待されています。 eシールと電子署名は、どちらもデジタル文書の信頼性を高めるための技術ですが、使用目的や使用者、法的意味が異なります。今回は、eシールと電子証明書の違いについて解説します。
eシールと電子署名の違い
企業などの角印(社印や組織印)の電子版にあたるのが「eシール」です。eシールは、企業や団体が発行する電子データに付与され、その発行元を証明します。電子署名も eシールと同様に、 付与したデジタルデータの完全性と発行元を保証します。
eシールは組織を特定するのに対して、電子署名は個人を特定します。電子署名では、付与した本人による意思表示まで証明することが可能ですが、eシールで意思表示を示すことは出来ません。また電子署名は個人を特定することとなるため、署名者は本人に限られます。
そのため、電子契約における意思表示を示す手段として eシールは利用できず、「組織の発行元」を特定する手段として利用されます。例えば、電子取引(注文書、契約書、送り状、領収書、見積書など)に eシールを付与して、発行元を証明することが可能です。 企業や団体など法人における電子署名の役割は、法人が「承認・意思表示」を行うことであり、電子文書に電子署名を行うことで「承認・同意したか」を法的・技術的に証明します。また、eシールは組織を特定することが目的なので、組織によって利用者権限を付与された複数人および組織で管理しているシステムに組み込んで利用することができます。この点が請求書や納品書、品質証明書など大量発行が想定される電子文書に対して付与する際に大きな利点となります。
| eシール | 電子署名 | |
|---|---|---|
| 対象 | 法人・組織 | 本人(個人) |
| 主な目的 |
|
|
| 意思表示 | なし | あり |
| 文書例 |
|
|
| 制度などの有無 | 技術、運用上の基準 ( 将来的には総務大臣認定 ) |
電子署名法に基づく制度 |
eシールと電子署名の違い
紙での押印が電子化における何に相当するかは、下記のようになります。
- 角印(社印、組織印等の組織を示す判子)...eシール
- 個人印(会社の代表印等の個人を示す判子)... 電子署名
実運用上の違い
eシールを付与するための証明書(eシール用証明書)、電子署名用の証明書の発行には、発行手続きおよび運用上の違いもあります。
個人に対して発行される電子署名用証明書の場合、発行時に本人確認の審査が必要です。また組織内の個人に向けて発行した証明書は、役職の変更や異動、退職などに応じて、電子証明書の失効、および電子証明書の再発行の手続きが必要になる場合があります。
組織に対して発行される eシール用証明書の場合は発行時に個人の審査は不要で、組織の実在性や必要書類の内容確認が行われます。この手続きを経て組織の実在性が認証局で証明されれば、証明書の発行後は組織の大幅な変更や重大なセキュリティリスクの発生などイレギュラーな場合を除けば、再発行することなく証明書の有効期間まで利用し続けることが可能です。したがって eシールで要件を満たす場合には eシールの方が運用は簡単です。
上記の用途や運用時の差分を理解して、企業から電子文書を発行する際に電子署名と eシールを使い分けて付与することで安全かつ効率的な運用を実現することができます。
「タイムスタンプ」との連携で、信頼性がより高まる
eシールと電子署名は、ともに発行元と署名者の証明に用いられますが、タイムスタンプは、それらの日時情報を証明します。例えば、組織が発行した電子文書に eシールを付与することで発行元証明と改ざんの検知をし、さらにタイムスタンプで文書の存在時刻を証明することで、契約の信頼性をより高めることができます。
例えば、「品質保証書で 1 年の保証を eシール付与により、保証書の自体の真正性は証明したが、いつを起点として保証内とするかどうかを証明したい」というように、「日時」を特定したい場合に有効です。近年は、品質保証書を発行する業界団体や情報通信業の領域を中心に、発行元のなりすましや内容の改ざんの検知など、デジタル化におけるセキュリティ面の課題を解決するため、eシールとタイムスタンプを組み合わせた活用事例が増えつつあります。
さいごに
データの信頼性を確保しつつ、安心安全にの発行文書の電子化を進めていくためには、電子署名や eシールのようなトラストサービスの利用が非常に重要なポイントになりますが、検討や導入にあたりどう進めていけばよいのか分からないといったご相談も多くいただいております。
サイバートラストでは電子署名に用いる「iTrust 電子署名用証明書」、eシール付与のために用いる「iTrust eシール用証明書」のどちらもご提供しています。
また発行する電子文書の数に応じて電子証明書の納品形態の選択や「iTrust リモート署名サービス」の併用を適切に行うことで、月間数件規模から数千件を超えるような規模の大量の文書発行にも柔軟に対応でき、お客様の環境、用途に合った最適な方法をご提案できます。
どちらの電子証明書も国際的な電子認証局の監査規格である WebTrust for CA 監査に合格し、Adobe 社の認定するルート証明書リスト(AATL)※に対応しており、Adobe Acrobat や Acrobat Reader の署名パネルおよび証明書ビューアで、利用者が直観的・視覚的に発行元証明と改ざんの有無を確認できるため、真正性の担保はもちろん、利便性も高い証明書となります。
- ※
- AATL とは:「Adobe Approved Trust List」として、Adobe 社が求める要件をクリアした電子認証局のリスト。AATL に登録された電子認証局から発行される PDF 文書署名用電子証明書により、法人(組織)名、住所、署名者の肩書(または所属部署)、署名者の氏名について PDF 上で簡単に電子署名の有効性を検証でき、 署名者本人が押印したものであることの確認が可能。
eシールや電子署名の導入検討にあたり、まずは情報収集をしたい、最適な方法を相談したいなどご要望がありましたら、是非ともサイバートラストまでお問い合わせください。
次回は、「eシール導入のメリット」について詳しく解説します。









