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Linux の知識・学習 BLOG

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2023 年 12 月 21 日

AlmaLinux の 2023 年を振り返る

CentOS Linux の終了が発表された 2021 年の年末から早いもので 2 年が経過し、一年を振り返る時期がやってきました。
CentOS 7 のサポート終了がいよいよ来年に迫った 2023 年は、AlmaLinux にとっても、我々にとっても大きな変化が起きた年でした。

今回は AlmaLinux の公式 Blog に掲載された「A look back at 2023 for AlmaLinux」を紹介しながら、サイバートラストがどのように AlmaLinux で活動していたかを振り返ります。

※ AlmaLinux の Blog「A look back at 2023 for AlmaLinux」の内容を翻訳して掲載しています。一部、元記事のセクション順を入れ替えて紹介しています。

AlmaLinux のスポンサーと支援者

" 今年、GitHub と Open Collective の個人支援者が 2 倍以上に増加しました。 皆さんには感謝してもしきれません。コミュニティのサポート ( 金銭的サポート、情報の普及支援、イベントでのブースの人員派遣、Web サイトの翻訳の改善など ) はすべて、利用可能な最高のエンタープライズ Linux ディストリビューションになるという目標の助けになります。
AlmaLinux OS Foundation の会員数は 350 名に増加し、さらに多くのスポンサー メンバーを財団に迎え、企業支援者の合計は 25 名になりました。Cybertrust Japan、OpenLogic、および Hawk Host が今年の新しい AlmaLinux スポンサー メンバーとして加わりました ! "

サイバートラストは今年の 5 月 22 日にプラチナスポンサーとして AlmaLinux に参加しました。( 現時点でプラチナスポンサーは CloudLinux 社とサイバートラスト社の 2 社 )

 集合写真。サイバートラストは今年の 5 月 22 日にプラチナスポンサーとして AlmaLinux に参加しました。

長年、MIRACLE LINUX を提供し続けているサイバートラストが AlmaLinux に参加することに発表当初から驚きの声と ( ありがたいことに ) 歓迎する声を多くいただいています。

改めて説明すると、サイバートラストが AlmaLinux に参加する目的は「開発の効率化と継続性の強化」「グローバルでより使いやすい選択肢」「OSS のコンプライアンス強化」の 3 点を実現し、特に国内の Linux ユーザーにより安全な Linux ディストリビューションを提供することです。そのために、1 スポンサー企業としてではなく、1 コミュニティメンバーとして MIRACLE LINUX の開発で蓄積したノウハウを惜しみなく投入しています。

現在 MIRACLE LINUX の開発エンジニアは Build System SIG を中心に AlmaLinux の開発コミュニティに参加しており、その知見を活かして多くの成果を上げています。

なお、MIRACLE LINUX の開発も AlmaLinux の知見を取り込みながら継続中です。MIRACLE LINUX は現在リリースしている 8 系、9 系のメジャーバージョンをそれぞれの EOL までサポートします。

来年以降も、MIRACLE LINUX のノウハウを活かしながらコミュニティと協力して AlmaLinux をより良いものに成長させて行ければと思います。

MIRACLE LINUX と AlmaLinux の開発スケジュール概要

AlmaLinux は自由を受け入れ始めます

" Red Hat は今年、ダウンストリームクローンが RHEL の 1:1 バイナリコピーであり続けるための手段を提供しないことを発表しました。その結果、私たちは RHEL の完全なコピーではなく、RHEL との互換性を約束することになりました。これが何を意味するかについては、Q&A ビデオまたは Piped をご覧ください。また、こちらのブログ記事でも詳細をご覧いただけます!

この変更の結果、AlmaLinux コミュニティは AlmaLinux 用の新しいリポジトリを導入し、他のどのエンタープライズ Linux ディストロよりも早く、重要なセキュリティとバグ修正を提供することができました。以下に、私たちが目にした最もクリティカルなエクスプロイトのいくつかと、そのタイムラインを示します。RHEL をアップストリームとしているディストリビューションは、これらのパッチがリリースされるのを待っています。 "

Exploit name and CVE Date announced AlmaLinux Release date RHEL release date
Zenbleed (CVE-2023-20593) July 24th July 24th - testing
July 27th - release
Aug 29th - ongoing
Downfall (CVE-2022-40982) August 8th August 14th - testing
August 29th - release
Nov 13th - ongoing
Inception (CVE-2023-20569) August 8th August 14th - testing
August 29th - release
Nov 13th - ongoing

" また、AlmaLinux openQA テストシステム を導入し、CloudLinux の TuxCare 部門は AlmaLinux 9.2 のための FIPS 検証 を達成する努力を後援し、推進しました。さらに、私たちは AlmaLinux OS CIS ベンチマークの 2 回目のアップデート をリリースし、AlmaLinux 9 の CIS ベンチマークアップデートに着手しました! "

RH 社が 6 月に出した声明 により、AlmaLinux を含めた多くのディストリビューションが影響を受けました。具体的には従来 RHEL のソースコードが公開されていた git.centos.org というリポジトリでは 2023 年 6 月 21 日以降は RHEL7 のソースだけが更新されることになりました。AlmaLinux もこのリポジトリを元に開発を行っていた為、ディストリビューション開発に必要なソース元を失ったことになります。

これによって、AlmaLinux が以前掲げていた「1:1バイナリコピー」が現実的に不可能になったため、以降の AlmaLinux は RHEL ABI 互換の OS として開発を行う方針に切り替え、継続することを決定しました。

RH 社ブログでソースコード公開に関する変更を発表

現在の AlmaLinux は CentOS Stream のリポジトリをはじめ、RHEL のサブスクリプション契約に違反しない様々な方法でソースコードを入手し、あるいは不足している部分は独自に補いながら、RHEL との互換性を pkgdiff toolpkg abidiff といったツールを使って担保しています。これは従来の方法と比べディストリビューションの地力が試される挑戦ですが、MIRACLE LINUX の開発ノウハウが最も活かせるやり方でもあります。結果として方針変更後も開発を継続できており、11 月のマイナーバージョンリリースも大幅な遅延なく達成することができています。

さらに、元記事でも紹介されているように RHEL の 1:1 ソースコピーというある種の「縛り」がなくなったことで従来よりもより早く一部の修正をユーザーに提供できるようになり、(これらは従来も取り組んでいましたが)FIPS-140-3( 米国 NIST の暗号モジュール規格 ) への対応や CIS ベンチマークのアップデートなど、OS の開発と平行してセキュリティ面の機能強化にも着手できたことでコミュニティとしての底力を示すことができたのではないでしょうか?

AlmaLinux のリリース状況

>AlmaLinux Systems:variant weekly checkins

" 2023 年には AlmaLinux 9.2, AlmaLinux 8.8, AlmaLinux 9.3, AlmaLinux 8.9 がリリースされました!私たちの素晴らしいコア、ビルド、インフラ SIG のおかげで、今年最初のリリースは電光石火の速さでリリースされました。OpenQA の実装で追加された拡張テストでも、9.2 は RHEL (Red Hat Enterprise Linux) 9.2 と同じ日にリリースされ、8.8 は RHEL 8.8 のわずか 2 日後にリリースされました!7 月にリリースプロセスを変更した後、AlmaLinux 9.3 と 8.9 はもっと遅れると思っていましたが、それでも RHEL から 1 週間しか遅れていませんでした。

年間を通して、私たちは AlmaLinux の採用数が着実に増加し、飛躍的な成長を遂げ始めていることを目の当たりにしました。毎週、a) ミラー システムを使用し、b) countme が有効になっている AlmaLinux デバイスが、AlmaLinux 採用数のグラフの一部としてカウントされます。
30 万から 60 万に成長するのに 10 ヶ月近くかかりましたが、2 ヶ月足らずで 60 万台から 70 万台になり、わずか数週間後には 75 万台に達しました。 "

AlmaLinux 8.4 のリリース以降、他の RHEL 互換 OS と比較しても迅速なリリース速度を誇っていた AlmaLinux は今年もその優位性を全面に出すことができました。6 月以降、RH 社による声明によりリリースプロセスの変更が発生しましたが、それでもアップストリームに対する追従速度は良好と言えるでしょう。

Ver RHEL 8 リリース日 AlmaLInux 8 リリース日 差異
8.4 2021-05-18 2021-05-26 8 日
8.5 2021-11-09 2021-11-12 3 日
8.6 2022-05-10 2022-05-12 2 日
8.7 2022-11-09 2022-11-10 1 日
8.8 2023-05-16 2023-05-18 2 日
8.9 2023-11-14 2023-11-21 7 日
Ver RHEL 9 リリース日 AlmaLInux 9 リリース日 差異
9.0 2022-05-17 2022-05-26 9 日
9.1 2022-11-15 2022-11-16 1 日
9.2 2023-05-10 2023-05-10 0 日
9.3 2023-11-07 2023-11-13 6 日

また、AlmaLinux の採用数が 7 月以降も大幅に伸びていることも注目に値します。
CentOS のサポート終了に関わる問題は依然として混沌とした状態が続いているものの、AlmaLinux は常に CentOS の後継として、無償の RHEL 互換 OS を提供し続ける姿勢を示し続けたことがこの結果につながっているのかもしれません。

世界中に広がる AlmaLinux

" 2023 年は素晴らしいイベントが目白押しで、私たちはたくさんの皆さんに直接お会いすることができました!ここでは、ご覧いただいた、もしくは見逃したかもしれない講演のいくつかをご紹介します。

February 3 CentOS Connect
AlmaLinux における SBOM の発表と講演
February 4-5 FOSDEM ( 来年も参加予定 !)
March 9-12 SCaLE 20x
March 21-23 CloudFest
April 13-15 FOSSASIA Summit
オープンソース・プロジェクトの選択について講演
June 13-15 OpenInfra Summit
July 13-16 FOSSY
最近の RHEL の変更についてパネルディスカッション
August 2-4 Flock to Fedora
エンタープライズ Linux におけるアップストリームコラボレーションに関するパネルディスカッション
September 8-9 Ohio Linux Fest (OLF)
October 4-5 DockerCon
October 15-18 All Things Open (ATO)
RHEL のソースなしでビルドすることについて講演
November 3-4 Seagl
November 12-17 SC (formerly Supercomputing)
December 5-6 OpenSource Summit - Japan
サイバートラストとのパートナーシップについて講演
December 9 AlmaLinux Day Tokyo
すべての講演は録画され、近日中に公開予定!

来年はすでに 24 のイベント候補がリストアップされています(最初の数ヶ月は近日発表発表します!)。どんなイベントに参加したいですか?チャットの「~マーケティング・ルーム」でお知らせください。 "

今年の AlmaLinux は米国、EU 圏だけでなくアジア、日本で開催されるイベントにも積極的に参加して情報発信をおこなってきました。7 月の FOSSY、8 月の Flock to Fedora では RH 社の声明に対して ( 現在と変わらない )AlmaLinux のスタンスを示しつつ、RH 社、AlmaLinix と同じ RHEL 互換 OS のコミュニティと活発な議論を交わしました。そして 12 月の OpenSource Summit Japan、AlmaLinix 史上初となる公式主催イベント AlmaLinux Day Tokyo は国内のユーザーに対して AlmaLinix がこの一年間どのような変化を遂げ、今後どのようなディストリビューションを目指すのかを共有し、ユーザーからのフィードバックも多く得られた良いイベントになったと思います。

AlmaLinux Day Tokyo の出展風景

OpenSource Summit Japan、AlmaLinux Day Tokyo は我々もコミュニティの一員として協力を行い、開発以外の部分でも貢献することができた貴重な機会でした。イベントの詳細やレポートは追って近日中に公開するので、現場の熱量を少しでも感じていただけると幸いです。

2024 年の AlmaLinux は?

" 今年は忙しい 1 年でしたが、AlmaLinux コミュニティのメンバー一人一人にとても感謝しています!皆さんのおかげで AlmaLinux は存在していますし、AlmaLinux に関わる人々にはいつも驚かされています。
2024 年も素晴らしい年になることを楽しみにしています。最新情報を知りたい方は、 フォーラム RedditXMastodonLinkedInFacebookYouTube をご覧ください。また、今年はニュースレターも開始しました。LinkedIn メーリングリスト の E メールで購読できます。 "

今年はサイバートラストが AlmaLinix に参加した記念すべき年でしたが、来年以降も AlmaLinix の一員として継続して開発、情報発信の両面でコミュニティとユーザーに貢献できればと思います。

2023年12月には、AlmaLinux OS Foundation のボードメンバーにサイバートラスト社員の吉田淳が就任しました。
https://almalinux.org/blog/2023-12-19-jun-and-alex-join-board/

今回のような公式 Blog の紹介や、国内向けの独自コンテンツ、イベントなども引き続き我々いのブログや YouTube などで発信していくので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

benny 氏

Igor 氏

Andrew 氏

本記事に関連するリンク
AlamLinux OS サポートサービス ご相談・お問い合わせ
CentOS 7 延長サポートサービス
デジタルトランスフォーメーションのための電子認証基盤 iTrust
SSL/TLS サーバー証明書 SureServer Prime