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Linux の知識・学習 BLOG

入門 AlmaLinux

2023 年 08 月 28 日

第 1 章 Linux の基礎知識 : 入門 AlmaLinux

はじめに

本ブログは、AlmaLinux の入門書です。Linux という OS に興味のある人、Linux を理解してビジネスに活かしたいと考えている人、すでに Linux を使って社内システムやクラウドサービスを展開している開発者などに、AlmaLinux に関する基本的な情報や基礎的な操作方法などを解説しています。すでに、CentOS など AlmaLinux 以外の Linux を使っている人にも、ディストリビューションごとの違いを理解できる情報も提供しています。

世界中のクラウドサービスや IoT 機器に、スマートフォンやタブレットなどのデバイスも、その中核を成しているソフトウェアには Linux のテクノロジーが使われています。AlmaLinux の基礎を学ぶことは、これからの IT 構築やクラウドサービス利用、あるいはテクノロジーを活用したスタートアップなど、さまざまなビジネスに役立つ基礎知識となります。

「第 2 章 AlmaLinux でできること」はこちら

「第 3 章 AlmaLinux の準備と導入」はこちら

目次

第 1 章 Linux の基礎知識

1-1 Linux って何?

1-2 Linux の歴史と魅力

1-3 Linux のディストリビューションとは?

1-4 AlmaLinux の魅力と特徴

1-5 AlmaLinux OS Foundation とは

1-6 AlmaLinux OS Foundation を支援するサイバートラストとは

1-1 Linux って何?

 Linux って何?

Linux (リナックス)という言葉を目にしたことはあるでしょうか。
私たちが毎日のように手にしているスマートフォンやパソコンには、iOS や Android、Windows に macOS など、OS (基本ソフト)と呼ばれるソフトが使われています。OS はスマートフォンやパソコンを使うために必須のソフトです。各メーカーが自社のデバイスに合わせたOSを提供しています。Linux もパソコンを使うために必要な OS の一種です。Windows や macOS のように、パソコンに最初から搭載されている OS とは違い、インターネットからダウンロードして自分でインストールする使い方が一般的です。

 Linux ダウンロード

Linux という OS をパソコン売り場で目にする機会は少ないですが、データセンターやクラウドサービスのように、大量のサーバーが稼働している施設では、数多くの Linux OS が使われています。また、Linux を実際に使ったことがなくても、SNS や動画配信などのクラウドサービスの裏側では Linux が活躍しています。その他にも、基幹系システムのデータを処理するデータベースやメールサーバー、ウェブサーバーなど各種サーバーにも Linux が使われています。

 Linux のクラウドサービスでの使用イメージ

見えないところで活躍している Linux ですが、その歴史や主な用途を知ると、ソフト開発やデータ処理などのビジネスに携わる人たちにとって、大切な知識が得られるだけではなく、デジタルを活用したサービスモデルの着想や構築など、新しい事業を始めるきっかけにもつながります。

1-2 Linux の歴史と魅力

Linux という OS の名称は、リーナス・ベネディクト・トーバルズ(Linus Benedict Torvalds)氏が開発した UNIX 互換のオープンな OS という意味で、開発当時の協力者が命名した、とウィキペディアに記載されています。

 リーナス・ベネディクト・トーバルズ氏

リーナス・ベネディクト・トーバルズ(Linus Benedict Torvalds)氏
(https://en.wikipedia.org/wiki/Linus_Torvalds 23 August 2023, at 03:32 (UTC))

Linux 開発のルーツとなった UNIX という OS は、複数のユーザーが 1 台のミニコンピュータを利用するための時分割管理(タイムシェアリング)システムとして、1960 年代に誕生しました。

 UNIXの使用イメージ

(タイムシェアリングは高価なコンピュータ 1 台を複数の端末で利用する技術)

1980 年代になると、UNIX は様々なコンピュータに移植されるようになり、インテル製プロセッサを搭載した機種でも利用できるようになりました。しかし、当時の UNIX はパソコンメーカーやソフトウェアの専業メーカーが中心となって開発していたので、その利用には特定のハードウェアの購入や、提供元とのライセンス契約が必須となっていました。そのため、各社が UNIX ベースに開発した OS に、Solaris や HP-UX に AIX など固有の名称を付けて、自社のハードウェア専用の UNIX として販売していました。
こうした状況を打破するきっかけが、1991 年にトーバルズ氏が開発した Linux でした。トーバルズ氏は、当時ヘルシンキ大学のコンピュータ学科に在籍し、インテルの 80386 プロセッサの命令セットで機能する UNIX 互換 OS の中核となるカーネルを個人で開発しました。

Linux が画期的だったのは、開発者が商用利用を制限する独自のライセンスで公開した点にありました。1992 年になると、Linux カーネルは米国フリーソフトウェア財団が推進する GNU General Public License でリリースされるようになり、多くの協力者が開発に参画し、OS として機能するために必要な各種ソフトウェアが、コミュニティによって生み出されるようになりました。

GNU オペレーティング・システム Web サイト : https://www.gnu.org/software/software.html#allgnupkgs

Linux OS の誕生に大きく貢献した GNU General Public License は、完全なフリーソフトウェアで構成された OS の提供を目指して、1980 年代から活動してきました。GNU プロジェクトでは、独自のカーネルも開発し、UNIX ユーティリティ用の各種フリーソフトウェアも整備してきました。これらのフリーソフトウェアと Linux カーネルが連携したことにより、Linux は OS として利用できる環境を整えました。そして、Linux カーネルと GNU プロジェクトで開発されたツールやユーティリティを組み合わせた Linux を独自のブランド名で提供するディストリビューションが誕生します。

1-3 Linux のディストリビューションとは?

Windows や macOS などの OS は、パソコンでアプリケーションを使うために必要なカーネルや各種ツールにユーティリティなどの関連するソフトウェアが、ひとつにまとまっています。メーカーが独自に開発し有償ライセンスとして利用権を提供している OS に対して、Linux はトーバルズ氏が開発したカーネルと GNU プロジェクトによって開発された各種ソフトウェアが、OSS (オープンソースソフトウェア)として自由に利用できるようになっています。

誰でも自由に利用できる OSS を PC にインストールするためには、Linux カーネルと関連するソフトウェアを利用者が自身で集めてきて OS として使えるようにパッケージングする必要があります。それに加えて、Linux で利用できる各種アプリケーションを管理する、Apple ストアや Microsoft ストアのようなパッケージ管理システムも必須となります。これら必須の構成要素を 1 つのパッケージとしてまとめて提供している配布形態が、Linux ディストリビューションと呼ばれています。

 Linuxディストリビューションのイメージ

これから Linux を使おうと考えている人にとって、少し悩ましい問題が、この Linux ディストリビューションの違いです。Linux カーネルに組み合わせるデスクトップ環境やパッケージ管理システムに各種ツールなどによって、提供するディストリビューターも異なり、利用のためのライセンス契約や価格も変わってきます。特に、業務や商用サービスで Linux を使おうと考えているケースでは、そのディストリビューターが日本国内でサポートを提供しているか、組み合わされているツールやユーティリティは安定的に稼働するものか、セキュリティ対策やバグ修正などが迅速に行われるか、といった点を重視しなければなりません。
また、Linux ディストリビューションには、100% フリーソフトのものから、商用利用を前提とした有償のものまで数多くあります。そこで、国内で利用されている代表的な Linux ディストリビューションを整理してみました。

Debian GNU/Linux

パッケージ管理システムに deb 形式を使っている 100% フリーのソフトウェアを理念としたコミュニティベースのディストリビューション。

Ubuntu

パッケージ管理システムに deb 形式を使い、デスクトップ環境として GNOME を採用し、クライアント用 Linux OS として広く普及。

Linux Mint

Ubuntu をベースとした構成だが、デスクトップ環境に Windows に良く似たデザインを採用し、Windows からの乗り換えが容易。

Red Hat Enterprise Linux

パッケージ管理システムとして RPM を使い、サーバーまたは高性能ワークステーションでの商用利用を対象としている。

MIRACLE LINUX

サイバートラストが開発する無償の国産 Red Hat Enterprise Linux 互換 Linux OS。

CentOS

Red Hat Enterprise Linux のクローン。2024 年 6 月でサポート終了。

AlmaLinux

CloudLinux によって開発された無償でオープンソースの Linux ディストリビューション。CentOS の後継とされ、Red Hat Enterprise Linux との高い互換性がある。

Rocky Linux

Rocky Linux は、Red Hat Enterprise Linux とバグまで含めた 100% の互換性を持つように設計されたオープンソースのエンタープライズオペレーティングシステム。

Linux ディストリビューションは、大きく 2 つの派閥に分かれています。1 つは、100% フリーソフトを目指しパッケージ管理システムにdeb形式を使っている Debian 系のディストリビューションです。もう 1 つは、商用利用を前提として、パッケージ管理システムに RPM を使った Red Hat Enterprise Linux と、その互換ディストリビューションです。世界的にも商用サービスの多くは RPM 系を採用しています。

その RPM 系の中で、CentOS がサポートを終了してしまい、MIRACLE LINUX を開発しているサイバートラストが、CloudLinux との協業を発表したことで、今後の Red Hat Enterprise Linux 互換のディストリビューションは、AlmaLinux へと引き継がれていきます。

1-4 AlmaLinux の魅力と特徴

AlmaLinux OS Foundation は、コミュニティをサポートし、あらゆる透明性の促進に取り組んでいます。AlmaLinux OS Foundation には、コミュニティが財団のメンバーとして参加し、コミュニティが運営委員会に投票できるようにしています。AlmaLinux は常に無料でオープンソースです。

AlmaLinux Web サイト : https://almalinux.org/ja/

AlmaLinux OS は、コミュニティが所有および主導する、安定した安全な Linux ディストリビューションで、 RHEL(Red Hat Enterprise Linux)と ABI (アプリケーションバイナリインタフェース) 互換性があります。ABI 互換性では、更新前のライブラリに存在する ABI が、更新後のライブラリでも使用できる互換性を保証しています。

AlmaLinux OS は、RHEL や CentOS Stream と同様の汎用オペレーティング システムです。アップストリーム (RHEL) で動作する場合は、AlmaLinux でもまったく同じように動作する互換性を維持します。ただし、CentOS Stream は AlmaLinux OS のリリースよりも先に提供される可能性があるため、常に 1 対 1 の関係にあるとはいえません。

AlmaLinux OS は、コミュニティが所有し主導する安定した安全な Linux ディストリビューションです。AlmaLinux は、グローバルに広がるコミュニティにサービスを提供し、幅広いユーザーのコンピューティング ニーズに応える Linux ディストリビューションを提供します。宇宙の謎を解き明かす粒子加速器の実行環境にも、Top500 HPC クラスターを実行しているスーパーコンピュータにも、データベース ワークロードを実行している企業のサーバーにも、オープンソース プロジェクトに取り組んでいる開発者にも、AlmaLinux は最適な Linux ディストリビューションです。

AlmaLinux は新しいリリースを迅速に提供します。通常、アップストリームの RHEL リリースの 1〜2 日後にリリースされます。更新は通常 24 時間以内に行われます。

AlmaLinux は、セキュリティ アップデートとバグ修正を少なくとも 10 年間提供します。さらに、AlmaLinux は、AlmaLinux 用の公式 CIS ベンチマークの利用可能性を含む、 Errata、パブリック OVAL ストリーム、OpenSCAP および SCAP Workbench パッケージを提供します。AlmaLinux では、SBOM (Software Bill of Materials : ソフトウェア部品表)をビルド パイプラインに統合し、ソフトウェア サプライ チェーンのセキュリティを促進します。

AlmaLinux OS Foundation は、安定した徹底的にテストされたアップデートとセキュリティ パッチを含む AlmaLinux のサポートに、以下の期間まで全力で取り組んでいます。

AlmaLinux 8.x ・・・2029年
AlmaLinux 9.x ・・・2032年

AlmaLinux は RHEL と ABI 互換であるため、ユーザーが遭遇する可能性のあるバグのほとんどは RHEL の一部です。バグが発生した場合は、CentOS Stream または (可能であれば) RHEL で確認する必要があります。バグがアップストリームの一部であることが確認された場合、AlmaLinux は、「アップストリームファースト」アプローチに従ってこれらのバグを CentOS Stream に送信して修正することを推奨します。これはバグ修正を RHEL に取り込むためのコントリビューション パスであり、RHEL は AlmaLinux に再構築されます。

1-5 AlmaLinux OS Foundationとは

AlmaLinux OS Foundation は、501(c)(6) の非営利団体です。AlmaLinux OS に関連するすべての資産を所有しています。一連の定款によって管理されています。
2022 年 9 月 20 日現在、財団には 7 名の理事がいます。

ベニー・バスケス、AlmaLinux OS Foundation の理事長。

ベニー・バスケス Linkedin 画面

ベニー・バスケス氏 LinkedIn : https://www.linkedin.com/in/bennyvasquez/

ジャック・アバウトブール、AlmaLinux のディレクター兼コミュニティ リーダー。

サイモン・フィップス、 AlmaLinux のディレクター、Open Source Initiative の元会長。

ジェシー・アスクルンド、AlmaLinux のディレクター、WebPros の CXO。

ダニエル・ピアソン- ダニエル、AlmaLinux の取締役、KnownHost, LLC(AlmaLinux ゴールド スポンサー) の CEO、AlmaLinux OS Foundation 会員委員会の委員。

モシェ・バー、AlmaLinux のディレクター、CodeNotary, Inc.(AlmaLinux ゴールド スポンサー) の CEO。

AlmaLinux OS Foundation のガバナンスは、オープン、透明性、参加型であるという目標を促進するために、501(c)(6) 非営利組織に基づいています。財団へのメンバーシップを申請し (無料)、AlmaLinux プロジェクトの運営委員会および重要な決定に投票できるコミュニティ メンバーに「所有権」はなく、支配株主や利益も存在しません。財団は会員による会員のためのものです。財務状況を含むすべての取締役会会議の議事録は公開および共有されます。

オープンソース(OSS)を支持する動きとして、Microsoft 社も自身を OSS の会社であることをアピールし、数多くの OSS エンジニアを採用し、OSS 開発に直接かかわって貢献しています。また、Microsoft 社、Google 社、Apple 社のサービスも OSS を利用して実現されています。

1-6 AlmaLinux OS Foundation を支援するサイバートラストとは

AlmaLinux OS Foundation を支援する協力企業の一社であるサイバートラストは、日本初の商用電子認証局として 20 年以上にわたり提供している認証・セキュリティサービスと、ミラクル・リナックスのカーネル技術やオープンソースソフトウェア(OSS)の知見を応用したオンプレミス、クラウド、組込み領域向けの Linux/OSS サービスを展開しています。また、これらの技術や実績を組み合わせ、IoT をはじめとする先端分野に向けて、「ヒト・モノ・コト」の正しさを証明し、お客様のサービスの信頼性を支えるサービスを推進しています。

サイバートラストは、CentOS Linux の後継として注目される Linux OS「AlmaLinux OS」を運営する The AlmaLinux OS Foundation に日本企業として初めてプラチナスポンサーとして参画し、コミュニティメンバーと協働して AlmaLinux OS の共同開発を行うことを発表しました。 2023 年 8 月の段階で、サイバートラストから 2 名のエンジニアが、AlmaLinux OS の開発に参画しています。
サイバートラストは、 20 年以上にわたる国産 Linux OS「MIRACLE LINUX」開発の知識や経験を活用し、AlmaLinux OS の開発方針や今後の方向性に関する議論、策定に加わるとともに、社員の AlmaLinux OS 開発への参加を支援します。AlmaLinux コミュニティの継続性を強化することによって、ユーザーメリットを最大化し、すべての Linux ユーザーに向けて安定して継続的な Linux の提供を目指します。
また、サイバートラストは、日本法人の AlmaLinux OS ユーザーを対象としたサポートサービスの提供に向けて、CloudLinux Inc. との協業も発表しています。両社の協業により、長期にわたって継続して迅速なセキュリティアップデートを提供する新たな OSS セキュリティサービスを展開し、国内法人システムにおける安心・安全な Linux 運用を実現します。

サイバートラスト、Cloud Linux 社ロゴ
AlmaLinux サポートラインアップ
AlmaLinux Standard サポート
  • 最大 16 年間にわたり全パッケージの脆弱性対応を保証
  • 日本語による障害解析・技術問合せ対応
AlmaLinux ライブパッチサービス
  • OS の再起動をせずにカーネルのパッチ適用が可能
  • 専用管理画面の提供
AlmaLinux FIPS140-3 対応サービス
  • ライブパッチの活用により FIPS140-3 への準拠を実現

ライブパッチとは:実行中のアプリケーションの中断や動作中のシステムを再起動せずに Linux カーネルに修正を適用できる仕組みです。通常、脆弱性対応などでパッチを適用するには、アップデートを反映するためにシステムの再起動が必要になります。

Linuxカーネルパッチ適用時システム再起動

サービスを提供しているサーバーにおいては、再起動によってサービスを一時的に停止しなければならないため、ライブパッチを利用することでシステムを再起動せずに実行中の Linux カーネルにセキュリティの脆弱性や重大なバグのパッチを適用することができます。

次回:第2章 AlmaLinux でできること

次回は、「AlmaLinux でできること」について解説します。

本記事に関連するリンク
この記事の著者 : 田中亘、サイバートラスト共著
 著者近影:田中亘
田中 亘

IT 関連を中心としたライターとして独立し、約 35 年のキャリアを通して、オープンシステムやインターネットにクラウド・コンピューティングなど、最先端のテクノロジーや産業を中心に、取材と執筆に取り組んでいる。
また、1994 年に創刊した「できる Word」は、現在も最新刊を発行するベストセラーの入門書。

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