2025 年 04 月 16 日
第1章 AlmaLinuxのメリットとインストール方法:実践 AlmaLinux
はじめに
本ブログは、AlmaLinux の実践書です。
AlmaLinux の理解を深めたい方、AlmaLinux をビジネスに活かしたいと考えている方、AlmaLinux を実際に使って社内システムやクラウドサービスを展開したいと考えている方に向けて、AlmaLinux を扱う上で実際に利用する可能性の高い実践的な操作方法などを解説します。
AlmaLinux は、スピード感のあるパッケージ提供ができ、市場やユーザーのニーズをいち早く反映させていくことができるため、ビジネスシーンで多く利用されています。
これからの IT システム構築やクラウドサービス利用、あるいはテクノロジーを活用したスタートアップなど、さまざまなビジネスにこの実践書をご活用ください。
目次
第 1 章 AlmaLinux のメリットとインストール方法
1-1 AlmaLinux のメリット
1-2 AlmaLinux のインストール
1-2-1 システム要件
1-2-2 対象のアーキテクチャ
1-2-3 ISO イメージの種類
1-2-4 ISO イメージのダウンロード
1-2-5 ISO イメージの書き込み
1-2-5-1 Linux で ISO イメージを書き込む
1-2-5-2 Windows で ISO イメージを書き込む
1-2-5-3 macOS で ISO イメージを書き込む
1-2-6 AlmaLinux のインストール
1-2-6-1 起動モードの確認
1-2-6-2 インストールの開始
1-2-6-3 インストールする言語の選択
1-2-6-4 インストール項目の設定
1-2-6-5 インストールの終了と再起動
1-1 AlmaLinux のメリット
AlmaLinux は、Linux ディストリビューションとして多くの魅力を備えています。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)と高い互換性があり、サポートの終了した CentOS Linux からの移行や、RHEL で利用しているアプリケーションを低コストで運用したい、といった用途に適しています。AlmaLinux のメリットを整理すると次のようなポイントになります。
- RHEL との互換性。RHEL で動作するアプリケーションやソフトウェアが動作します。AlmaLinux では、RHEL で慣れ親しんだアプリケーションやソフトウェアをそのまま使用できます。
- 無料でダウンロード可能。AlmaLinux は、オープンソースの Linux ディストリビューションです。無料でダウンロードして使用できます。コストを抑えて Linux を利用できます。
- コミュニティの活動が活発でサポートも充実。AlmaLinux は、世界中のユーザーによって開発されサポートされています。困ったときでも、助けてくれるユーザーが世界中にいて情報も豊富です。また、日本では企業ユーザー向けにサイバートラストが有償でサポートしています。
- セキュリティアップデートを定期的にリリース。AlmaLinux は、セキュリティを重視しています。最新のセキュリティアップデートが、定期的にリリースされ安全に使用できます。
- 安定性が高い。AlmaLinux は、非営利団体の「AlmaLinux OS Foundation」の運営のもと、中立的な立場で開発されている Linux ディストリビューションです。安定性が高く、安心して使用できます。
1-2 AlmaLinux のインストール
1-2-1 システム要件
AlmaLinux のインストールには、以下のシステム要件を満たしたハードウェアか仮想化環境が必要になります。
システム要求:
- ディスク容量 : 最小 10GB、20GB 推奨
- 最小 1.5 GB RAM
インストールには、8GB〜12GB の USB フラッシュ ドライブを利用します。
1-2-2 対象のアーキテクチャ
AlmaLinux は、以下の 4 種類のアーキテクチャをサポートしています。
- インテル /AMD (x86_64)
- ARM64 (aarch64)
- IBM PowerPC (ppc64le)
- IBM Z (s390x)
1-2-3 ISO イメージの種類
これら 4 つのアーキテクチャに対して、3 種類の ISO イメージが用意されています。
- boot- インターネット経由でパッケージをダウンロードする単一のネットワーク インストール ISO イメージ。
- minimal- オフライン インストールを可能にする最小限の自己完結型 ISO イメージ。
- dvd - ほとんどすべての AlmaLinux パッケージを含む完全なインストール ISO イメージ。
AlmaLinux の必要最小限の機能を利用するときには、minimal が適しています。データベースや Web サーバーなど、特定のサーバー機能を安全に運用するには、最小限の AlmaLinux に対して必須のパッケージのみをインストールして運用します。
AlmaLinux を Windows や macOS のように、デスクトップ環境として利用するときには、完全なインストール ISO イメージの dvd をインストールします。
1-2-4 ISO イメージのダウンロード
AlmaLinux の ISO イメージは、以下のサイトからダウンロードできます。
利用したい ISO イメージのリンクをクリックすると、ダウンロードが始まります。
もし、利用している OS が curl コマンドをサポートしているときには、コマンドラインから以下のコマンドを実行すると、ISO イメージをダウンロードできます。
curl -O https://raw.repo.almalinux.org/almalinux/9/isos/x86_64/AlmaLinux-9.5-x86_64-dvd.iso
また、AlmaLinux の最新版を利用したいときには、以下のサイトからダウンロードできます。
- AlmaLinux 8 の ISO イメージ
https://repo.almalinux.org/almalinux/8/isos/ - AlmaLinux 9 の ISO イメージ
https://repo.almalinux.org/almalinux/9/isos/
例えば、AlmaLinux 9 のダウンロードサイトでは、アーキテクチャ別に 3 種類のディレクトリが用意されています。
利用したいアーキテクチャを選択すると、3 種類の ISO イメージを選択できます。
参照先のサイトには、最新版と 1 つ前のバージョンが掲載されています。
1-2-5 ISO イメージの書き込み
ダウンロードした ISO イメージを USB デバイスに書き込みます。USB デバイスへの書き込みは、利用している OS によって異なります。
Linux を利用している場合は、dd コマンドを利用します。
Windows では、オープンソースの Rufus の利用を推奨しています。
macOS では、クロスプラットフォーム ツールの balenaEtcher を推奨しています。また、dd コマンドも利用できます。
1-2-5-1 Linux で ISO イメージを書き込む
Linux の dd コマンドで ISO イメージを USB デバイスに書き込む手順は、以下になります。
1.USB デバイス名の確認
sudo fdisk -l コマンドを実行して、PC に接続している USB デバイスのブロック ストレージ デバイス名を表示します。
例えば、32GB の USB デバイスでは、次のように表示されます。
これらの情報の中で、必要になるプロック ストレージ デバイス名は「ディスク」で表記されている /dev/sdb となります。
2.USB デバイスへの書き込み
ターゲット USB のデバイス名がわかったら、ダウンロードした ISO イメージを指定して、以下の dd コマンドを実行します。
sudo dd if=./AlmaLinux-9.5-x86_64-dvd.iso of=/dev/sdb status=progress
dd コマンドのオプションは以下のようになります。
1-2-5-2 Windows で ISO イメージを書き込む
Windows で ISO イメージを USB デバイスに書き込むには、オープンソースの Rufus ( ルーファス ) などを利用します。Rufus は、起動可能な USB フラッシュドライブを作成するソフトウェアです。
以下のサイトからダウンロードできます。
Rufus を利用すると、画面のように対象となる USB ドライブや ISO イメージを指定できます。
Rufus は、Windows 8 以降に対応していますが、32bit 版では正しく ISO イメージを書き込めないので、必ず 64bit 版を利用しましょう。
1-2-5-3 macOS で ISO イメージを書き込む
macOS で ISO イメージを USB デバイスに書き込むには、クロスプラットフォーム ツールの balenaEtcher を利用します。balenaEtcher は、以下のサイトからダウンロードできます。
balenaEtcher を利用すると、マウスの操作で ISO イメージを選択し、USB ドライブを指定するだけで、インストール用 USB を作成できます。
1-2-6 AlmaLinux のインストール
インストール用の USB デバイスが作成できたら、対象の PC に AlmaLinux をインストールします。
1-2-6-1 起動モードの確認
インストール対象の PC の BIOS( バイオス ) 設定画面から、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)か BIOS を選択します。セキュアブートを有効化するなどセキュリティを強化したいときには、UEFI を利用します。
また、USB デバイスが優先的に起動ディスクとして利用されるように、BOOT( 起動 ) ディスクの順番を変更します。
1-2-6-2 インストールの開始
USB ドライブから AlmaLinux が起動すると、インストール用のメニューが表示されます。
画面は、AlmaLinux 9.5 のインストール例になります。
作成した USB ディスクの AlmaLinux が、正しいバージョンかどうかは、この画面で確認します。
インストールしたいバージョンが正しければ、[Install AlmaLinux 9.x] が選択されているか確認して、Enter キーを押します。
1-2-6-3 インストールする言語の選択
インストールが始まると、最初に利用する言語を問い合わせてきます。
マウスが接続されていれば、[ 日本語 ] などをクリックして選択できます。
言語を選択したら画面右下の [Continue] をクリックして、次に進みます。
次に、インストールの概要を設定する画面が表示されます。
表示される内容や表記は、選択した言語やインストールする AlmaLinux のバージョンによって、多少の違いがあります。
1-2-6-4 インストール項目の設定
インストールを進めるためには、赤く表示されている項目について、利用者が設定する必要があります。
必須の設定は、root ユーザーのパスワード設定、新規ユーザーの登録、そしてインストール先ディスクの指定になります。
それぞれのセクションの意味と目的は、以下のようになります。
ローカル セクション
キーボードや利用する言語にタイムゾーンを設定します。
ソフトウェア セクション
追加のソフトウェアやソースを指定します。
minimal や dvd の ISO イメージからインストールするときは、追加のソフトウェアは不要です。
システム セクション
ドライブ パーティションの作成、暗号化、KDUMP の有効化、ネットワークの指定、セキュリティ プロファイルの選択など、システムの構成をカスタマイズできます。
インストール先のディスクにパーティションを作成したり、データを暗号化するときには、[INSTALLATION DESTINATION] から、対象のデバイスを選択し、パスワードなどを登録します。
ユーザー設定 セクション
ユーザー設定では、システム管理者の root ユーザーのパスワードを登録します。ここで、root のパスワードを設定しないと、インストールを開始できません。root ユーザーに設定するパスワードは、セキュリティ対策を強化するためにも、推測されにくい複雑な英数文字と記号の組み合わせが推奨されています。
Root パスワードの設定に続いて、新規のユーザーも登録します。
インストールした AlmaLinux の運用では、セキュリティ対策の観点からも root ユーザーではログインしないで、特権のない一般ユーザーで利用するようにします。
1-2-6-5 インストールの終了と再起動
root ユーザーのパスワード設定、新規ユーザーの登録、そしてインストール先ディスクの指定を完了し、[Begin Instlation]( インストールの開始 ) をクリックすると、インストールが始まります。
インストールが完了すると、再起動を確認する画面が表示されます。
[Restart System]( システムの再起動 ) をクリックして、PC を再起動します。
再起動する前に、USB ドライブを抜いておきます。
次回:第 2 章 AlmaLinux の初期設定とセキュリティ対策
次回は、「AlmaLinux の初期設定とセキュリティ対策」について解説します。
* Red Hat、Red Hat Enterprise Linux は、米国およびその他の国における Red Hat, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。
* Linux® は、Linus Torvalds の米国およびその他の国における登録商標です。
* macOS は、米国およびその他の国における Apple Inc. の登録商標です。
* Windows は、米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。
