2026 年 08 月 25 日
画面離脱と業務分断を防ぐ!自社サービスに電子契約を組み込む UX 設計と電子署名の活用法
~SaaS・DX 推進担当者必見!離脱を防ぐ「ユーザー体験(UX)」設計の選択肢~
はじめに
本記事は、以下のような方を対象としています。
- SaaS 事業者
- DX 推進担当者
- 新規事業担当者
- システム企画担当者
今年 4 月に JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が発表した「企業IT利活用動向調査2026」によると、電子契約の利用率は初めて 8 割を超え、利用効果として、業務効率化だけでなく事業拡大やブランド価値向上への寄与も示されました。また、「電子契約の利用による効果」を問う設問では、「契約時のセキュリティの強化」は 34.0%(2024 年)から 36.6%(2026 年)へと上昇するなど、サイバー攻撃リスクへの意識の高まりを背景に、電子契約のセキュリティ面での効果を重視する企業が増えています。
一方、導入後の課題において 1 位「取引先に電子契約への対応を依頼する際の説明や調整負荷」(37.3%)、2 位「電子契約サービス・システムのコスト(利用料、運用保守費)の負担」(29.2%)、3 位「電子契約と紙契約の併用に伴う運用の複雑化」(27.6%)が上位を占めており、コスト負担と移行期の運用複雑化が導入定着の障壁となっていることがうかがえます。
加えて、実際に導入した後も「社内の承認フローや稟議システムとの連携が不十分である」(19.3%)や「電子契約サービス・システムがほかの業務システムと連携できていない」(15.0%)という課題もあります。
<電子契約の導入における課題>

出典:「企業 IT 利活用動向調査 2026」(電子契約の利用状況編:一般財団法人日本情報経済社会推進協会)
こうした課題に対応し、本ブログでは、サービス設計やユーザー体験(UX)の観点から電子契約のあり方について考えてみます。
- ※
- 電子契約とは、電子的に作成した契約書を、インターネット経由で契約先に送付し、契約内容の合意の意思表示として、契約当事者の電子署名を付与することによって契約を締結するものです。書面への署名捺印に代わり、電子文書に「電子署名」「タイムスタンプ」や「電子サイン」を付与することで電子契約が可能です。詳しくはこちらの BLOG をご覧ください。
ユーザーにとって契約はサービス体験の一部
ユーザーが様々なサービスを利用する目的は、「サービスによって得られる恩恵(利益)」であって、「契約をすること」そのものではありません。
例えば、
- 不動産サービスなら物件を利用開始すること
- 金融サービスなら預金・決済や融資、資産運用、保険手続きなどを行うこと
- SaaS サービスならサービスを使い始めること
が本来の目的です。
一方で、サービスを利用する過程において、契約の工程(※下図の 4)だけ UX が分断され、別システムで提供されているケースもあります。

このケースでは、
- 画面デザインが変わる
- URL やドメインが変わる
- 操作方法が変わる
といった変化が発生する場合があります。
サービス提供側から見ると小さな違いであっても、ユーザーにとっては不安や迷いにつながることがあります。
また、手続き途中での離脱や問い合わせの発生など、サービス利用開始までのプロセスに影響する可能性も考えられます。
ユーザーにとって、サービス利用前の契約プロセスも含めて「サービス体験の一部」として提供できるかが重要になります。
契約機能をサービスへ組み込むという選択肢

サービス画面のデザイン統一やシームレスなシステム連携によって一貫したユーザー体験をサービスの一部として重視する場合には、契約機能そのものをサービスへ組み込む方法も選択肢の一つとして考えられます。
ただし、契約機能は画面だけで実現できるものではありません。
その裏側では、
- 契約者が本人であることの確認
- 契約内容が改ざんされていないことの確認
- 契約履歴の記録や管理
といった契約に関わる各種情報の信頼性を担保する仕組みも必要になります。
こうした仕組みを実現する方法は一つではありません。
例えば、
- ① 電子契約サービスを利用する
- ② 電子署名システム(API)を活用する
といった方法があります。
① 電子契約サービスを利用する
概要
既存の電子契約サービスを契約し、そのサービス上で契約業務を行う方法。
メリット
- 導入しやすい
- 開発がほとんど不要
- 短期間で利用開始できる
- 電子契約に必要な機能が整っている
- 運用負荷を抑えられる
デメリット
- 契約画面が別サービスになることが多い
- UI やデザインの自由度が低い
- 自社サービスとの連携に制約がある
- ユーザー体験が分断される場合がある
向いているケース
- 契約業務をすぐ電子化したい
- 開発リソースが少なくしたい
- まずは電子契約を導入したい
② 電子署名システム(API)を活用する
概要
電子署名や電子証明書などのシステム(API)を利用し、自社サービス側に組み込んで電子契約機能を実装する方法。
メリット
- UI/UX を自由に設計しやすい
- 自社サービスに違和感なく組み込める
- 既存システムとの連携がしやすい
- 独自要件に対応しやすい
- ユーザー体験を統一しやすい
デメリット
- 開発・運用設計が必要
- 導入までに時間がかかる場合がある
向いているケース
- SaaS 事業者
- プラットフォーム事業者
- 会員サービス運営事業者
- 独自のユーザー体験を重視するサービス
| 項目 | 電子契約サービス | 電子署名システム (API) |
|---|---|---|
| 導入しやすさ | ◎ | △ |
| 開発負荷 | ◎ | △ |
| UX 統一 | △ | ◎ |
| カスタマイズ性 | △ | ◎ |
| システム連携 | △ | ◎ |
| 拡張性 | △ | ◎ |
| SaaS 組み込み適性 | △ | ◎ |
図:「電子契約サービス」と「電子署名システム(API)」の活用比較表
サービス事業者にとって重要なのは、どの方法が優れているかではなく、自社が提供したいユーザー体験やサービス要件に合った方法を選択することです。
サイバートラストが提供する電子署名クラウドサービス「iTrust リモート署名サービス」や本サービスと連携する「iTrust 電子署名用証明書」は、本比較表で「電子署名システム(API)」に相当し、シンプルな API により、サービス利用開始までのプロセスの影響を最小限にし、自社が提供したいユーザー体験やサービス要件に合った設計を柔軟に実現する選択肢の一つとして利用されています。
まとめ
サービス事業者にとって、電子契約は契約業務のデジタル化という側面だけでなく、サービス全体の体験設計という観点からも検討できるテーマです。
特に、
- SaaS 事業者
- DX 推進担当者
- 新規事業担当者
- システム企画担当者
にとっては、契約機能を単独で考えるのではなく、サービス全体のユーザー体験の中で捉えることで、新たな検討の方向性が見えてくるかもしれません。
例えば、今年 7 月、法務省とデジタル庁は、商業登記電子証明書における G ビズ ID 連携の「リモート署名方式」の運用を発表し※、当社は「商業登記電子認証ポータルシステム及びリモート署名システム」の設計・開発・運用業務を担当しました。
商業登記電子証明書による電子署名をオンラインで安全かつ便利に実現する仕組みとして、リモート署名基盤をご提供しています。
デジタル化に伴い、従来の紙での手続きとの違和感を最小限に設計した操作性と高品質なセキュリティが特長で、PC にファイルを保存する手間なく、スマホアプリから直接クラウド上で電子署名を行えるようになりました。
加えて、
- 自社サービスへ電子契約機能を追加したい
- 契約プロセスをサービス内で完結させたい
- 電子署名や電子証明書の活用を検討したい
- 電子契約基盤の選定について相談したい
といった課題がある場合は、早い段階で実現方法を整理しておくことも有効です。
サイバートラストでは、「iTrust リモート署名サービス」「iTrust 電子署名用証明書」などのサービスを提供しています。電子契約機能の組み込みや基盤選定についてご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。






