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コラム:日本の医療現場におけるデジタル化の現状と主要課題

業界の課題

日本の医療業界が直面している喫緊かつ巨大な課題

日本の医療業界は、慢性的な人材・IT 技術者不足、予算制約、既存システムとの連携困難といった複合的かつ深刻な構造的課題に直面しています。

少子高齢化の急速な進展により医療需要が増大する一方で、医師や看護師をはじめとする医療従事者の慢性的な不足という深刻な構造的課題に直面しており、質の高い医療サービスを維持し、医療従事者の過重な負担を軽減するためには業務の効率化とデジタル化が喫緊の課題として認識されています。特に、新型コロナウイルス感染症の流行は、医療現場の業務ひっ迫に拍車をかけ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性を一層浮き彫りにしました。

日本の医療 DX における主要課題と具体的な影響

課題カテゴリ具体的な課題具体的な影響
人材不足医療従事者不足医療提供体制の維持困難、医療崩壊リスク
IT 技術者不足業務効率低下、DX 推進の停滞、不十分なシステム活用
予算・経営多大な DX 導入コストDX 投資の停滞、導入の遅れ
小規模医療機関の経営難DX 投資困難、競争力低下
システム連携既存システムとの連携難情報共有の非効率、重複検査、業務負担増大
電子カルテ導入の遅れ診断の正確性低下、転記ミス、患者情報共有の遅れ
社会構造地域医療格差医療サービス提供の不均等、患者アクセス阻害
超高齢化社会医療需要の増大、医療費・介護費の増大、医療従事者不足の深刻化
情報セキュリティサイバー攻撃リスク増大システム停止、情報漏洩、患者生命への脅威

これに対し、厚生労働省は「医療 DX 令和ビジョン 2030」を掲げ、全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテの標準化を通じて、医療の質向上と効率化を目指しています。

課題への対応策

厚生労働省「医療 DX 令和ビジョン 2030」の展望

このビジョンが目指す未来は、多岐にわたります。具体的には、地域差のない医療サービスの実現、国民全体の健康増進、患者自身がマイナンバーカードと連携した電子カルテを通じて自らの診療情報を管理できる時代の到来、医療従事者のスキルアップ支援、医療資源の最適配分、そして持続可能な医療体制の構築です。患者にとっては、無駄な検査や重複する治療が減少し、効率的で質の高い医療を受けられる環境が整うことが期待されています。

「医療 DX 令和ビジョン 2030」は、主に以下の三つの柱で構成されています。

全国医療情報プラットフォームの構築

医療・介護情報を集約・共有:現在医療機関や介護施設などでバラバラに管理されている患者の医療情報を、一つに集約して利用できるようにするシステム

電子カルテの普及・標準化

データ連携を円滑化:医療機関などの間でのスムーズなデータ共有を推進するため、電子カルテ情報の規格を揃えることを目指します

診療報酬改定 DX

ベンダー・医療機関の負担軽減:診療報酬の算定や患者負担医療費を計算できる全国共通の電子計算プログラムの開発・運用や、標準様式のアプリ化・データ連携など

このビジョンの実現には、機微性の高い医療情報の安全性を確保することが不可欠であり、最新の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版」では、ゼロトラストモデルの導入や経営層の責任強化といった、より高度なセキュリティ対策を明確に求めています。

求められる要件

医療機関に求められるセキュリティ要件、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版」

医療 DX の推進により、医療現場の作業効率化、情報共有の促進、診断の正確性向上、遠隔診断・オンライン診療の実現、患者満足度向上、医療コスト削減といった多岐にわたるメリットが期待されています。

しかし、その実現に向けた課題として、「データのセキュリティとプライバシー保護」が最も重要な課題の一つとして明確に挙げられています。医療情報の統合と共有が進めば進むほど、サイバー攻撃の標的となるリスクと、万が一情報漏洩が発生した際の影響範囲が飛躍的に拡大します。

挿入画像のサンプル 挿入画像のサンプル

医療情報システムの高度化とサイバー攻撃の巧妙化が急速に進展していることを受け、セキュリティ対策強化が医療 DX の喫緊の課題であり、こうした状況に対応するため、厚生労働省は 2023 年に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を第 6.0 版に改定・公表しました。

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版」の要点

全体構成の整理と経営層の責任強化

経営層や企画管理者もガイドラインの内容を理解し、情報セキュリティ対策に積極的に関与することが求められ、経営層の責任がこれまで以上に明確化されました。

ゼロトラストセキュリティモデルの導入

従来のネットワーク境界防御型思考だけでなく、すべてのアクセスを検証するゼロトラストを採用することで、より堅牢な対策が可能となります。

災害・サイバー攻撃などの非常時対応

事業継続計画(BCP)/災害復旧計画(DR)の整備やネットワークから切り離してバックアップデータを保管することが推奨されています。

まとめ

日本の医療 DX は、少子高齢化に伴う医療需要の増大と医療従事者不足という構造的課題に直面しており、人材不足、予算制約、既存システムとの連携難といった多岐にわたる複雑な課題を抱えています。しかし、厚生労働省が掲げる「医療 DX 令和ビジョン 2030」は、全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテの標準化を通じて、これらの課題を克服し、持続可能で質の高い医療提供体制を構築するための明確な方向性を示しています。

このビジョンの実現には、医療情報の安全性を確保することが不可欠であり、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版」は、その基盤を築くための具体的な要件を提示しています。特に、経営層の責任強化、ゼロトラストモデルの導入、外部委託・クラウドサービス利用時の厳格な管理、そして非常時対応の具体化といった変更点は、医療セキュリティのパラダイムシフトを促すものです。これは、情報セキュリティが単なるIT部門の技術的課題に留まらず、医療機関の事業継続性と患者の生命に関わる経営課題として認識されるべきであることを意味します。

サイバートラストは、長年の電子認証技術と情報セキュリティコンサルティングの実績を背景に、ガイドラインが求めるゼロトラスト、多要素認証、BCP、電子文書保存といった要件に合致する様々なご提案が可能です。ぜひご相談ください。

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