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滞在型のワーケーションの取り組みが進む沖縄、ビジネス客誘致の必要条件は"情報セキュリティ"

コワーキング施設の整備を進め、滞在型ワーケーションなどの新しい誘客を推進している沖縄では、企業誘致や地域活性に向けた条件として情報セキュリティの重要度が高まってきている。特に大企業によるビジネスワーケーションを誘致するには、情報セキュリティ対策が必要不可欠なインフラになりつつある。地域活性と情報セキュリティの間にはどんな関係があるのか。

沖縄のテレワーク事情を説明してくれるのは、内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 商務通商課で課長補佐を務める鶴見有衣氏と、同課でサービス産業係長を務める鈴木圭三氏。内閣府沖縄総合事務局は内閣府の冠が付いているが、局内に経済振興を担当する経済産業省所管の経済産業部と、観光産業を担当する国土交通省の所管の運輸部がある。鶴見氏と鈴木氏は、経済産業部で観光だけに依存しない大きな経済効果を見据えた取り組みを続けている。そもそも、内閣府が旗を振って沖縄で広くテレワーク旅客の誘致に関係した取り組みを開始したのは、どのような経緯があったのだろうか。

内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 商務通商課 鶴見有衣氏(左)、鈴木圭三氏(右)
内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 商務通商課 鶴見有衣氏(左)、鈴木圭三氏(右)
<ホテル アンテルーム那覇にて撮影>

最初の課題は「1人あたりの観光消費額の停滞」だった

鶴見氏は、自らが担当したそのきっかけをこう振り返る。「2018 年度に沖縄でワーケーションのモニターツアーを実施したのが始まりでした。長期滞在用マンションに宿泊してもらい、仕事もそこで行ってもらう形で、首都圏の企業 8 社ほどが 2 週間テレワークモニターツアーを行いました。このときの課題は、沖縄の観光消費額の停滞の打開が中心でした」。コロナ前で観光需要は高まり、沖縄にも年間 1,000 万人を超える観光客が訪れていた。これはハワイに次ぐ数値だという。しかし沖縄の課題は、1 人あたりの観光消費額の停滞。1 人あたりはハワイの半分以下にとどまり、その差はハワイと沖縄の滞在日数の差に関係していた。2 泊、3 泊で動きまわる観光の沖縄と、1 週間といった滞在をするハワイの違いが、1 人あたりの観光消費額の差として現れていた。

どうやったら滞在日数を伸ばせるか。「首都圏の企業などでテレワークが浸透しはじめ、休暇に観光地などで仕事をするワーケーションが注目されてきた時期でした。そうした働き方の選択できるなら、沖縄は最適な候補の 1 つです。テレワークによる長期滞在化で消費額の増加が見込めると考えました」(鶴見氏)。こうして初年度の取り組みでは、沖縄県の 2018 年度の観光客 1 人あたりの消費額の 7 万 2853 円/平均 3.8 日の滞在に対して、ワーケーションのモニターツアーでは 11 万 8445 円/10 日と、長期滞在に伴う観光消費額の増加が確認できた。

そして 1 つ興味深いことがわかってきた。ワーケーションでは、有名観光地を飛び回る 2 泊 3 日などの観光客とは違う行動が見て取れたのだ。「テレワークやワーケーションが目的の人は、滞在している市町村の中で楽しむため、地域との距離が近く、地元の人に近い行動パターンがありました。こうした特性を自治体に訴求することで、いままでとは異なる滞在客の取り込みを考えました」(鶴見氏)。

2019 年にもモニターツアーは継続して実施した。2018 年は宿泊場所とワークスペースが一緒だったが、参加者からはこれらを分けてほしいとの要望が多数寄せられた。そこで滞在(宿泊)場所とワークスペースを双方用意して、1 年目よりも規模や受け入れ地域を増やして実施することにした。そうした努力の甲斐があり、首都圏の大手企業なども含めて参加者が増え、需要の高まりを感じることになった。

一方で、大手企業からは、情報セキュリティに対する要望が多く上がってきた。鶴見氏は「情報セキュリティに対応したワークスペースでないと社員を派遣できないという要望がありました。まだコワーキング施設では情報セキュリティを全面に打ち出していない段階でしたが、その重要性を実感しました」と語る。

2019 年には、沖縄県内のコワーキング施設の整備も進んだ。ホテルゆがふいんおきなわのコワーキングラウンジ「ハナウール」が 11 月にオープンした。ハナウールではサイバートラストによるセキュリティの脆弱性診断を実施し、情報セキュリティ対策を施してからのオープンだったこともあり、地元の新聞でも取り上げられた。ハナウールのオープンをきっかけに、他のホテル・観光協会などでもコワーキング施設への興味、関心が高まってきた。

脆弱性診断を実施した名護市のコワーキング施設「ハナウール」

コロナ禍で意識の変化、テレワーク推進事業の申請は倍増

こうした中で、内閣府沖縄総合事務局では、2020 年度から新たに「沖縄テレワーク推進事業費補助金」の公募を始めた。テレワーク施設を沖縄県内に整備し、県外企業の沖縄進出や新たな産業創出、県内外企業の労働環境改善等を促進することにより、沖縄の産業振興に寄与することを目的とした事業だ。2020 年 2 月に公募した初年度は想定の申請件数には至らなかったという。ところがコロナ禍によりテレワークが急速に浸透した 2021 年 2 月の公募では「同規模の予算に対して、前年度の 2 倍近い申請がありました」(鶴見氏)というように、テレワーク施設整備への注目が高まっていったことがわかる。

補助事業ではテレワーク施設の整備に事業費を補助しており、施設の情報セキュリティ強化への取り組みも補助事業の対象として申請できる。とはいえ、セキュリティ強化を強制するものではなく、事業者ごとに施設の目的が異なり、セキュリティへの意識の差は開いているのが現状のようだ。「コミュニティを重視し、フリーランスやノマドワーカーを受け入れたいという事業者は、高いセキュリティを重視しない傾向です。一方で大企業のシェアオフィスなどを誘致したいという事業者は情報セキュリティへの取り組みを進めています。沖縄総合事務局としては、2021 年度に補助事業に採択された事業者に対しても、情報セキュリティ強化の重要性を周知していきたいと考えています」(鶴見氏)。

鈴木氏は、情報セキュリティについての潮目が変わったのは、「新型コロナ」だと振り返る。「当初は観光型のワーケーションを想定してテレワーク事業を進めていました。ところがコロナ禍になって、ビジネスワーケーションという、仕事をする環境を求めて沖縄に来る需要が高まってきました。そうなると、情報セキュリティ環境の話が必ず出るのです。サイバーセキュリティだけでなく、オンライン会議などを個室でできること、入退室が管理できることといったフィジカルなセキュリティの要求も高く、受け入れ側もセキュリティへの意識が高まってきました」(鈴木氏)。コロナ禍を経験したことで、広い意味での情報セキュリティのスペックアップが求められるようになった。

地域に何の貢献をすることができるか

沖縄のように、観光が基本にある地域にとっては、観光型のワーケーションへの期待は大きい。しかし、観光だけに限らず「定住でも一時的な観光でもなく地域と多様な関わりを持つ関係人口化することで、もっと交流したい、もっと知りたいという人の流れはありますし、ハッカソンなど地域の課題を知ってもらうような交流も出てきています。沖縄総合事務局では運輸部とも連携して、観光型のワーケーションを入口にしながら、関係人口の創出に力をいれていきます」(鈴木氏)。経済産業部としては長期滞在型のビジネスワーケーションの拡がりが、地域活性につながる大きなチャンスと捉えている。

「コロナ禍以前は、遠隔で仕事をする、2 拠点で生活するといったことへの考えは進んでいなかったのですが、コロナ禍により考え方が大きく変わりました。リモートワークが定着することで、企業進出のハードルが下がってきているのです。企業を受け入れる側も、大量雇用を生むことを考えるのではなく、都会と地方の経済格差を埋めるために"ノウハウ誘致をしたい"という考えにシフトしつつあります。企業誘致、企業立地のあり方が雇用創出からスキルトランスファーへと変化しています」(鈴木氏)。企業にとってハードルが下がった結果、「沖縄で」という場所が先に決まり、リモートで仕事をしながら沖縄における事業計画を練る、というケースも少なくないという。

そうした企業進出のトレンドを捉えると、「情報セキュリティ」は大きなポイントになる。鈴木氏は、「情報セキュリティは、企業進出を考えたときの必要条件でしょう。比較対象の候補になるためには、情報セキュリティは不可欠です。そのうえで、十分条件がより整っている地域が選ばれると考えます。沖縄は職住一体で観光資源も多く十分条件はかなり整っています。だからこそ、必要条件の 1 つである情報セキュリティ対策やネットワークの通信速度なども含めたIT環境の整備の重要度が高まっています」と語る。

日本テレワーク協会とセキュア IoT プラットフォーム協議会が、セキュリティ基準を満たしたテレワーク施設に対する「共同利用型オフィス等のセキュリティ対策に係る認証プログラム」を提供しはじめた。こうした認証プログラムについて鈴木氏は、「情報セキュリティは言葉で表現することが難しいです。それだけに、セキュリティレベルが可視化され、テレワーク施設を検討するときの基準ができることはとても良いことです。こうしたセキュリティ面での取り組みは、企業や人材の沖縄進出の後押しになり、沖縄の経済振興につながる可能性を感じます」と評価する。

企業進出の必要条件と考えられる情報セキュリティが確保されれば、大都市の会社の従業員が沖縄で働く姿を描きやすくなる。鈴木氏は、「インターネットや情報セキュリティ環境も含めたテレワーク施設、コワーキング施設は、街のインフラのようなものになると考えています。机があるだけの単機能な施設ではなく、多機能化して沖縄にマッチしていくようなコワーキングの変化のあり方を考えていきたいです」と将来に目を向ける。鶴見氏も、「沖縄に住んで、生活のしやすさ、環境の良さを実感しています。モバイルワークが浸透し、環境のよい場所で仕事をするという選択が当たり前になっていく未来において、観光だけでなく、ビジネスも含めた日々の生活の場の1つとして沖縄が選ばれ、沖縄の経済環境が発展していくことを願っています」と語る。

沖縄の取り組みから、働く人を沖縄に呼び寄せて地域活性を支えるために、情報セキュリティがインフラとして鍵を握ることが見えてきた。

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