第 11 話：組込み Linux「EMLinux」のフットプリントを調べてみた

はじめに

EMLinux は第 3 話：組込み Linux「EMLinux」をカスタマイズしてみようでご紹介したように、ビルド環境の設定ファイルを追加・修正することで、ベースとなるイメージから独自の組込みシステムイメージを容易にカスタマイズすることが可能です。

EMLinux では目的に応じて選択できるように 3 種類のベースイメージを提供しています。それぞれ搭載される機能が異なるため、出来上がる EMLinux のサイズ（フットプリント）にも差があります。

本記事では、3 種類の EMLinux のフットプリントの比較、そして最も小さなフットプリントのイメージ emlinux-image-compact の概要について紹介します。

EMLinux のフットプリント

EMLinux が提供するベースイメージとそのサイズ（フットプリント）を調べました。サイズは QEMU でイメージを起動し、df コマンドを実行した際の Used 欄の値です。パッケージ数は QEMU でイメージを起動し、dpkg コマンドで出力されたパッケージの総数です。調べた結果は以下のとおりです。（EMLinux 3.3-202509 版時点）

イメージ名	概要	サイズ (MB)	パッケージ数
emlinux-image-weston	起動後に Weston が実行される、GUI 環境のイメージ	685	298
emlinux-image-base	起動後にログインシェルが実行される、CUI 環境のイメージ	331	144
emlinux-image-compact	emlinux-image-base より小さなフットプリントのイメージ	107~243^※	67~73^※

※: フットプリント削減オプションにより増減します。

通常、GUI が必要な場合は emlinux-image-weston を、不要な場合は emlinux-image-base をベースとしてカスタマイズを開始いただくことを推奨しています。
しかし、搭載するハードウェアの制約等で、emlinux-image-base よりもフットプリントの削減が求められるケースにおいては、emlinux-image-compact が利用可能です。ただし、いくつかの制約があります。次節で詳しく述べていきます。

QEMU の画面

emlinux-image-compact の概要

emlinux-image-compact は、より小さなフットプリントの実現のため、emlinux-image-base と比較して大幅な変更を加えています。主な変更点は以下のとおりです。

コマンドの軽量化

coreutils パッケージのコマンドを busybox のコマンドに置き換え。
util-linux パッケージのコマンドを busybox のコマンドに置き換え。
シェルの置き換え。

init システムの変更

init システムに systemd ではなく、軽量な sysvinit を採用。

不要なファイルの削除（オプションにより選択可）

Perl 関連パッケージの削除
特定のドキュメントディレクトリの削除
boot ディレクトリ内のファイルの削除
デバイスツリーファイルの削除

上記の変更に伴い、本イメージには以下のトレードオフがあります。イメージを選択する際はこれらを踏まえて検討していただくことを推奨しています。詳細はお問い合わせください。

一部のシェルスクリプトが動作しない
apt によるパッケージアップデート等が利用できない

おわりに

本記事では、EMLinux が提供する 3 種類のイメージのフットプリント比較と、最小構成イメージである emlinux-image-compact の特徴についてご紹介しました。一般的な Linux と違ってストレージ容量に制限のある組込み製品では、フットプリントは気になるところなのではないでしょうか。

EMLinux は、POS システムのような GUI システムからフットプリントの小さい Headless もしくは CUI システムまで、お客様の利用されるハードウェアや目的に合った最適な Linux を開発いただくことが可能です。

EMLinux についてのご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

また、導入をご検討のお客様に、EMLinux 評価版を提供しています。以下よりお申し込みください。