コンテンツの真正性を技術的に担保する基盤として画像生成 AI プロダクトに iTrust C2PA 用証明書を採用
事例企業: LINEヤフー株式会社
SNS やオンラインサービスが日常に浸透する中、デジタルコンテンツの出所や来歴そのものを確認する時代が幕を開こうとしています。
デジタルコンテンツの出所来歴情報を自社サービスに付与できないか。新たな取り組みをスタートさせたのが、LINEヤフーです。同社は、開発中の画像生成 AI プロダクトのワークフローに新規格「C2PA」を取り入れ、サービスで生成した画像が「確かに LINEヤフーが生成したものである」ことを証明できる仕組みを構築しました。

画像生成 AI プロダクトへの C2PA 適用対応を進める
『「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」をとどける』をミッションに、コミュニケーションアプリ「LINE」や総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」をはじめ、さまざまなサービスを展開する LINEヤフー。グループ会社(子会社・関連会社)数は約 170 社に上り、連結従業員数は約 2 万 7000 人(2025 年 9 月末時点)に達します。
同社は、自社サービスを支える IT インフラを独自に構築・運用していますが、ユーザーから信頼されるサービスを提供するために力を入れ始めたのが、コンテンツの信憑性(信頼できるか)や真正性(本物であるか)の担保です。画像解析や画像生成の研究開発やサービスへの実装を担当している、田中 智大氏はこう話します。
「当社サービスで利用する画像生成 AI プロダクトを開発しています。プロダクト開発の中で調査して分かったのが、コンテンツの信憑性や真正性をどう担保するかという要望が世界的に高まっており、今から、グローバル標準の仕組みを採用していくことが重要ということでした。そこで採用したのが C2PA です」(田中氏)
C2PA は、Microsoft、Adobe、Arm、Intel、BBC などが連携して設立したコンテンツの出所・来歴の認証に関する技術標準化団体です。画像や映像などのデジタルコンテンツの取扱者が C2PA 仕様に対応することで、コンテンツの信憑性や真正性を担保できる仕組みです。
「生成した画像にサイバートラストの iTrust C2PA 用証明書を付与することで、画像が LINEヤフーによって生成された画像であることをユーザーに示すことができます。LINEヤフーによって生成された画像が意図しない使われ方をしていないかを把握できるようになります」(田中氏)
デジタルコンテンツ保護の必要性を実感
C2PA はすでに、Adobe が提供する制作ソフトウェアや、ソニーなどが提供する真正性サービスなどで採用されています。簡単に言えば、コンテンツをどこの誰が作成し(出所)、いつどう編集されたか(来歴)を電子証明書や電子署名などの技術を使って証明する仕組みです。LINEヤフーが C2PA に取り組んだ意図や狙いについて、長内氏はこう話します。
「グローバルで標準的な仕組みの 1 つとして普及しつつある C2PA の存在を知りました。コンテンツの信頼性は、サービス全体の信頼性に直結します。現在は、ユーザー自身が簡単に高品質な画像・動画を生成できる一方、意図しない誤情報や偽造コンテンツが拡散しやすくなっています。生成 AI だけでなく、クリエイターが制作するさまざまなコンテンツをどう保護していくかも重要です。LINEヤフーとして、コンテンツの真正性を技術的に担保する基盤を持つことが重要だと考えて、C2PA 対応を積極的に進めることを決めました」(長内氏)
ただ、どのように C2PA を実装するかは不明点が多かったといいます。システムへの実装を担当した、土井氏はこう話します。
「1 年ほど前から C2PA の仕様調査を開始し、社内での適用可能性を検討しました。ただ、C2PA に接するのは初めてのことで、どのような仕組みで真正性を確保するのか当初はよくわかっておらず、署名や電子証明書の知識も十分にありませんでした。こうした技術のサポートを得たいと考えて相談したのがサイバートラストでした」(土井氏)
サイバートラストの SSL/TLS サーバー証明書はすでに LINEヤフー社内でサービスを利用した実績がありました。そこで直接連絡を取り、C2PA の導入や実装方法についてレクチャーを受けたといいます。
サイバートラストのサポートのもと、C2PA 署名の付与・検証を確認
LINEヤフーは、サイバートラストが提供する iTrust C2PA 用証明書を開発中のプロダクトに組み込むことを決めました。採用した理由について、田中氏はこう話します。
「サイバートラストは、日本国内で C2PA の普及を積極的に推進されており、証明書サービスや認証局の運用に豊富な実績があります。コンテンツの署名と検証に用いる証明書の信頼性は非常に重要であり、安全性と実績のあるサイバートラストのソリューションなら安心して利用できると判断して採用を決めました」(田中氏)
C2PA/CAI では現在、画像の出所来歴情報や改ざんの有無などを確認する用途で「Verify サイト」を提供しています。Verify サイトで画像を検証することで、誰がこの画像を生成したのか、改ざんされていないかどうか、を表示することができます。
サイバートラストは 2024 年 2 月に C2PA に加盟し、証明書を発行する認証局としてこの Verify サイト上に登録されているため、画像を検証するとサイバートラストの証明書で署名されたデジタルコンテンツであることがわかります。

長内氏はこう話します。「現在は、生成した画像に対して C2PA による署名を付与するプロセスの検証を進めているところです。サイバートラストの証明書を利用し、署名付与が実際のプロダクトにどのように組み込めるかを確認している段階です。サイバートラストの担当者には証明書の技術的な仕組みや実装方法を親身にサポートしていただきました。このサポートがなかったら、C2PA 対応もここまでスムーズに進まなかったと思います」(長内氏)
C2PA の導入効果について、土井氏はこう説明します。
「まだ検証段階ではありますが、C2PA 署名の付与・検証が想定どおりに機能することを確認できています。また、プロダクトにどう組み込むか、運用のイメージがつきつつあります」(土井氏)
一方で、課題が見えてきたことも成果だといいます。課題としては、サービス上での画像の保存・編集の過程で C2PA 署名が失われる可能性がある点、リサイズや圧縮時に署名をどこまで保持すべきかといった運用面での課題などです。
クリエイターに寄り添った生成 AI 利用のあり方を示していきたい
今回開発した C2PA に対応した画像生成 AI プロダクトは、将来的にLINEヤフーのサービスに組み込んでいく予定です。それが実現すると、エンドユーザーは画像生成機能を使って、LINEヤフーサービスに掲載するコンテンツを生成することができるようになります。そして、その画像には LINEヤフーが生成した画像であることを証明する電子証明書と電子署名が付与されているのです。
C2PA は画像生成 AI 画像に限らず、さまざまな写真やイラスト、映像などさまざまデジタルコンテンツに適用できる技術です。今後の取り組みについて、田中氏はこう話します。
「将来的には、ユーザーが扱う生成画像やクリエイターが制作するコンテンツなど、幅広いデジタルコンテンツの信頼性を下支えする技術として活用できるようにしたいです。業界標準である C2PA を採用することで、より透明性・信頼性の高いサービス体験を提供できる未来を期待しています」(田中氏)

また、土井氏は、C2PA やサイバートラストに対して、こう期待を寄せます。
「国際的な標準としてさらに普及し、画像・動画・テキストなど領域を問わず、デジタルコンテンツの真正性を一貫して保証できる仕組みが広がることを期待しています。サイバートラストには、国内における C2PA の普及や啓発をさらにリードしていただきたい。証明書・検証の仕組みがより扱いやすく進化していくことで、より多くの企業が導入しやすくなることを期待しています」(土井氏)
そのうえで長内氏は、開発中の生成 AI プロダクトを中心として、クリエイターをサポートするような取り組みを進めていきたいと話します。
「クリエイターをないがしろにするような生成 AI コンテンツが流通することは、よい世界ではありません。C2PA を活用しながら、LINEヤフーとしてクリエイターに寄り添った生成 AI 利用のあり方を示していきたいと考えています」(長内氏)
※ 本事例は 2026 年 1 月の情報を元に記載しております。
導入企業様のご紹介
LINEヤフー株式会社は、2023 年 10 月に、LINE 株式会社やヤフー株式会社などのグループ会社による再編を経て誕生した日本最大級のテックカンパニーです。
約 40 の国と地域から集まった 1 万人以上の従業員が働く LINEヤフーは、ユーザーに感動を与えるサービスを提供し続けるとともに、インターネットの力を通じてより豊かで便利な暮らしの実現に貢献していきます。









