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2026 年 01 月 22 日

Spring Framework サポート終了(EOL)への戦略的対応:事業継続のための5つの重要ポイント

はじめに

多くの日本企業において、Java プラットフォーム向けのアプリケーションフレームワークである Spring Framework(Spring) は、基幹業務システムや会員基盤など、事業の根幹を支えるミッションクリティカルなシステムで採用されています。これらのシステムは「停止が直ちに事業損失につながる」ほどの重要性を持ち、理論よりも安定稼働が最優先されてきました。

この背景から、Spring のバージョンアップは常に「最新技術へ追随し、技術的負債を解消すべきだ」と主張する先進派と、「安定稼働中のシステムを今は変更できない」とする現実派の間で、長らく議論が平行線を辿ってきました。

しかし、Spring の主要バージョンである 6.0.x 系が 2024 年 8 月 31 日、5.3.x 系は 2024 年 12 月 31 日に公式サポートを終了(End of Life, EOL)したことを受けて、現状維持は選択肢として成り立たなくなりました。

本稿では、この課題に対し企業の戦略策定に貢献する 5 つの重要なポイントを解説します。

1. ポイント ①:EOL の直近のリスクは「システム停止」ではなく「説明責任」

EOL がもたらすリスクを正しく理解するためには、まず一般的な誤解を解き、その本質を技術的な問題からビジネス上の問題へと転換して捉えることが戦略的に極めて重要です。

EOL を迎えたからといって、システムが翌日に突然停止するわけではありません。これはよくある誤解です。EOL の真のリスクは、将来新たに発見される脆弱性に対して、公式のセキュリティパッチが提供されなくなる点にあります。安定稼働しているように見えても、システムは無防備な状態に置かれることになるのです。

エンタープライズ環境では、インシデントの発生以前に「説明責任」が問われる場面が数多く存在します。例えば、内部監査や取引先から提出を求められるセキュリティチェックシートなどが代表例です。

これらの場面において、「現在、安定稼働しているため問題ない」という理由は一切通用しません。公式サポートが終了したソフトウェアを本番環境で利用しているという事実自体が、セキュリティガバナンス上の重大な不備と見なされます。この「説明責任」を果たせなくなることこそが、ビジネス上の深刻なリスクとなるのです。

これにより、Spring の EOL 問題は開発部門の技術タスクから、CFO や CRO(Chief Risk Officer)が関与し、経営会議で予算とリソースを審議すべき全社的な事業継続リスクへと転換されます。

では、このビジネスリスクについて、公式ベンダーはどのように捉えているのでしょうか。次のポイントでその視点を見ていきましょう。

2. ポイント ②:公式ベンダー自身が認識する「一斉移行の非現実性」

企業のアップグレード戦略を策定する上で、Spring の公式ベンダーである VMware の動向は、極めて重要な判断材料となります。そして、その動向は非常に示唆に富んでいます。

Spring 本体の EOL が迫る一方で、VMware は Spring Boot 2.7 およびその関連ポートフォリオに対する商用サポートを 2026 年末まで延長すると発表しました。

この延長措置が示唆しているのは、公式ベンダーである VMware 自身が「すべての企業が一斉に最新バージョンへ移行することは非現実的であり、各社がそれぞれのペースで対応する必要がある」という現実を深く認識していることの表れです。これは、市場の実態を理解した上での合理的な判断と言えるでしょう。

この流れは、堅牢なサポート体制を正攻法で確保し、信頼性と保証を最優先する組織にとって、VMware Tanzu Spring Runtime のような公式の商用サポートが最も強力な選択肢であることを明確に示しています。公式ベンダーによる保証は、監査や対外的な説明責任を果たす上で、比類のない価値を提供します。

しかし、この理想的な選択肢と、多くのプロジェクトが直面する複雑な現実との間には、しばしば大きな隔たりが存在します。

3. ポイント ③:真の課題は Spring 単体ではなく、相互に連携する依存ライブラリ

公式サポートという正統な道筋が見えているにもかかわらず、多くのアップグレードプロジェクトが計画通りに進まない背景には、Spring 単体の問題以上に複雑な要因が存在します。

多くのプロジェクトが、以下のような現実的な課題に直面しています。

  • 全面的なシステム刷新計画は存在するが、具体的なスケジュールが未定である。
  • 大規模な改修予算の確保は来年度以降の計画であり、今年度は現行バージョンでの運用が必須である。
  • 複数のシステムが密接に連携しており、一つのアップグレードがもたらす影響範囲の特定が極めて困難である。

これらの課題をさらに複雑化させるのが、相互に連鎖するライブラリ群の存在です。Spring のアップグレードは、フレームワーク単体の問題にとどまりません。実際には、Tomcat や Jackson といった他のライブラリとの間に複雑に絡み合った依存関係が存在し、移行作業を当初の想定よりもはるかに大規模で困難なものへと変えてしまいます。

この依存関係の複雑さは、予期せぬ互換性チェックや膨大な量のテストを次々と誘発します。結果として、プロジェクトのスコープ、期間、そしてコストを大幅に増大させる根本的な原因となるのです。

この複雑な状況に対応するための一時的かつ戦略的な選択肢として、第三者による延長サポートが存在します。

4. ポイント ④:第三者延長サポート(ELS)は恒久対策ではなく、移行時間を確保する現実的な選択肢

公式サポートへの即時移行が困難な状況下で、セキュリティリスクを放置することはできません。このギャップを埋める代替策として、サイバートラストが提供しているTuxCare ELSのような第三者による延長サポートが選択肢となります。その役割は、公式 EOL 後も継続的なセキュリティパッチを提供することにあります。

ELS を検討する上で最も重要なのは、その価値と限界を正しく理解することです。ELS は、移行を不要にするための解決策ではなく、安全な移行計画を完了させるための時間を確保する目的で利用されるべき戦術的な手段といえるでしょう。

この選択肢を検討する際には、以下の 3 つの重要な注意点を明確に認識し、行動する必要があります。

  1. 利用条件や契約内容の評価 :ELS は公式ベンダーによるサポートではなく、第三者機関によるものです。公式の保証とは本質的に異なるため、利用条件や契約内容を個別に評価しなければなりません。
  2. 移行計画の中での位置づけ :ELS の目的は恒久的な運用維持ではなく、計画的な移行を完了させるまでのセキュリティ確保です。これを恒久的な解決策と見なすことはできません。
  3. サポート対象範囲の確認 :ELS は Spring 本体の脆弱性を対象としますが、Tomcat や Jackson といった重要な依存ライブラリは対象外です。これらのコンポーネントに対するリスクは、別途評価し、対策を講じる必要があります。

これらの注意点を踏まえ、最終的にどのような戦略を立てるべきかを見ていきましょう。

5. ポイント ⑤:問われるのは「移行期間を管理する戦略」

戦略策定の核心は、「将来の理想的なシステム像」と「現在稼働している現実のシステム」という、相反する二つの要求を同時に管理することにあります。問われているのは、このギャップを埋める移行期間のリスクをいかにコントロールするかという、組織自身の戦略なのです。

これを踏まえると、各選択肢の位置づけは明確になります。

  • VMware 公式商用サポート :信頼性と保証を最優先する場合の、正統な選択肢。
  • 第三者延長サポート(ELS:現実的な移行スケジュールとの間に生じる「空白期間」のセキュリティを確保するための、戦略的な選択肢。

最終的に、ELS が「計画的移行を支援する有効な投資」となるか、「技術的負債を先送りするためのコスト」に終わるかは、組織が ELS をどのように位置づけ、活用するかにかかっています。ELS の利用が恒久的なものではないことを認識し、具体的な移行計画と完了期限をセットで提示することが重要です。この戦略的な位置づけがあって初めて、ELS は監査担当者や経営層を納得させられる選択肢となり得ます。

おわりに

Spring の EOL は、もはや現状維持を許さず、組織に現実的な計画と戦略の策定を迫る、重要な経営課題です。自社の状況、予算、そして将来のシステム像を総合的に考慮した、時間軸を意識した現実的な戦略を構築することが、この課題に対する最も誠実で効果的なアプローチと言えるでしょう。

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