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2024 年 09 月 19 日
Next GIGA や校務 DX で選定すべき端末とは?~ GIGA スクール端末で必要なセキュリティ対策【前編】 ~
2019 年より始まった GIGA スクール構想では全ての児童生徒に端末と高速なネットワーク環境を整備し、一人ひとりの学習スタイルに合わせた、より効果的な学習を実現するための取り組みとなっており、2023 年度中には国公立の小中学校児童へ 1 人 1 台の端末配布が完了したとされます。
端末配布が完了して一安心!... と思いきや、そうではありません。
児童生徒に配布された端末は、故障頻度の増加やバッテリーの劣化を理由に、耐用年数が 5 年程度となっており、早いところでは 2024 年度から端末のリプレイスが始まっていき、今後も一定のサイクルで端末のリプレイスが行われていくこととなります。
これまで端末購入費用の補助金は、1 台当たり 4 万 5000 円でしたが、2024 年度からは 1 万円上乗せされて 5 万 5000 円まで引き上げられました。背景としては、昨今の物価高騰によるパソコンやタブレット端末の価格が上昇していることに加えて、教育現場では児童生徒の利用する端末のスペック不足により、授業に支障をきたすといった課題があがってきているため、端末のスペック向上を目的に補助金が引き上げられたと考えられます。
文科省が推奨する端末と最低スペックとは?
文部科学省が公開している資料では、GIGA スクールで利用する端末 (Windows、iPad、Chromebook) とその最低スペック基準とチェックリストを公開しています。
(出典)文部科学省「GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータ最低スペック基準 」
注意したい点として、前項で述べた端末購入費用の補助金については 周辺機器込みの価格 となっているため、それぞれタッチペンとキーボードが必要となります。Windows と Chromebook 端末においてはデフォルトで画面とキーボードが一体化しているモデルが多数ですが、iPad についてはキーボードが付属していないため、タッチペンと合わせて購入する必要があります。
なお、2021 年 7 月時点にはなりますが、文科省が国公立の小中学校等を対象に利用している学習用端末の割合を調査した結果が公表されています。
(出典)文部科学省「 端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)(確定値)」
- ChromeOS(Chromebook):40.0%
- Windows:30.9%
- iOS(iPadOS):29.1%
- その他(macOS や Android OS など):0.1%
Chromebook が最も高い割合で選定され、それに続く形で Windows と iPad で二分している状況ですが、今後の端末リプレイスについても同じような割合は推移していくかというと、そうはならない事情があります。
2021 年当時、iPad については最も安いモデルが国内販売価格で 3 万 9800 円でしたが、円安の影響等もあり 2022 年には 4 万 9800 円に価格が上昇し、2024 年では文科省の最低スペックを満たすモデルを Apple Store で購入しようとすると最低でも 5 万 5800 円が必要となり、これに周辺機器としてタッチペンとキーボードを揃えるとなると補助金の 5 万 5000 円を超えてしまいます。そのため、今後の端末リプレイスでは iPad の割合が徐々に低くなっていき、その分 Chromebook と Windows の割合が増えていくものと想定されます。
なぜ Chromebook が教育現場で選ばれるのか?
Chromebook が教育現場で採用される大きな要因として、以下の3点が挙げられます。
- 低価格
最も大きな理由として、Windows や iPad に比べて価格が安いため、タッチペンを含めても十分補助金の枠内で購入が可能であること。 - 動作が軽い
Chromebook は基本的にクラウド上のアプリケーションへアクセスして利用することを前提として作られているため、端末の負荷が低く MEXCBT や各オンライン上の学習コンテンツ利用との相性がよいこと。 - 無償かつ自動の OS アップデート
Chromebook に搭載されている Chrome OS は無償かつ自動で OS のアップデートが行われること。
教師の利用する端末→️ Chromebook 利用が拡大中
これまで、校務系システムと学習系システムのネットワーク分離により、教職員は学習用で1台、校務用で1台と異なる端末をそれぞれ用意して端末を行き来していました。しかし、文科省では従来のネットワーク分離に依存したセキュリティでは、対策が不十分かつ教職員の業務負担が大きいということから、校務系システムと学習用システムを統合し、ゼロトラストの考えに基づいたアクセス制御の導入を推奨し、全国の教育委員会でもシステムのリプレイスのタイミングで切り替えるところが増えてきています。
(出典)文部科学省「GIGA スクール構想の下での校務 DX について~教員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~( 詳細版 )」
端末を用いた授業を行う場合、教職員の端末側で操作方法や画面遷移を実際に児童生徒へ見せながら進行しなければならず、教職員用の端末は少なくとも児童生徒用の端末の OS と合わせる必要があります。そこで生徒が利用しているものと同じ Chromebook 1 台のみを教職員用の端末として配布するケースが増えています。
ただし、教職員の利用する Chromebook では児童生徒に関する個人情報や成績情報といったセンシティブな情報を取り扱うため、文科省の推奨しているゼロトラストに沿ったセキュリティ対策が必要となります。次回は Chromebook におけるセキュリティ対策のベストプラクティスについて説明します。