採用情報 お問い合わせ

ホームページ 記事一覧

トピックス 2026 年 10 月 01 日

AlmaLinux は誰のものなのか - AlmaLinux OS Foundation が示す「オープンソースの道」

AlmaLinux Day Tokyo 2026 基調講演 01

2026 年 1 月 23 日、神奈川県・川崎で「AlmaLinux Day Tokyo 2026」が開催された。「AlmaLinux for Enterprise ~業務システムで使える AlmaLinux~」をテーマに、AlmaLinux の最新動向や企業での活用事例などが紹介された。

本稿では、AlmaLinux OS Foundation の Chair である benny Vasquez 氏による基調講演「AlmaLinux and the Open Source way」を取り上げる。

CentOS で起きたことを、AlmaLinux では繰り返さない

Vasquez 氏がまず語ったのは、AlmaLinux が生まれた背景だった。CentOS Linux では、コミュニティを中央で所有・統治する仕組みが存在しなかったことが、プロジェクトの方向性が大きく変化した一因だったという。

そこで AlmaLinux では、米国の非営利法人として AlmaLinux OS Foundation を設立。特定企業に依存しない中立的なガバナンスを採用し、理事会もコミュニティメンバーによる選挙で選出する仕組みとした。理事会の議事内容や選挙プロセスなども公開し、「透明性」を組織運営の重要な原則としている。

技術面では、AlmaLinux Engineering Steering Committee(ALESCo)が中心となる。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)からの変更や、AlmaLinux 独自の判断が必要な場合も、オープンな議論を通じて決定する体制だ。

「安定していること」を最優先にする

AlmaLinux が支持を集めている理由として Vasquez 氏が挙げたのが、OS としての品質とセキュリティ、そして長期的な安定性だ。

AlmaLinux は無料で利用できるコミュニティ所有の RHEL 互換 OS として、メジャーバージョンごとに 10 年間のサポートを提供する。RHEL と同じバージョン番号やリリースサイクルを採用し、同じソースからビルドすることで互換性を維持している。RHEL のソースコード公開方法が変更された 2023 年以降も、メジャー・マイナーリリースともに、おおむね1週間程度で追随しているという。

一方で、Vasquez 氏が繰り返し強調したのは「新しい機能を入れること」以上に「長期間、安定して使えること」の重要性だ。

「AlmaLinux をセットアップした後は、それが AlmaLinux であることを気にせず、本来やりたいことに集中してほしい」。そうした考え方こそ、企業や研究、医療、産業などで利用される OS に求められるものだと説明した。

ユーザーが OS の未来を変えられる仕組み

では、利用者が「AlmaLinux をこう変えてほしい」と思った場合はどうすればいいのか。

その答えとして紹介されたのが RFC(Request for Change)だ。変更提案をリポジトリに提出すると、チャットや Pull Request、会議などを通じて議論され、最終的に投票によって判断される。会議の日程も公開され、ユーザー自身が議論に参加できる。

ここでも重要なのは、意思決定を閉じた場所で行わないことだ。Vasquez 氏は、透明性と個人が発言できることを AlmaLinux にとって「crucial」、つまり極めて重要な要素として位置付けた。

OSS は「使うだけ」でもコミュニティを支えられる

講演の後半では、AlmaLinux への貢献方法も紹介された。エンジニアだけでなく、システム管理者、デザイナー、マーケター、経営者など、さまざまな立場から参加できるという。

フォーラムで他の管理者を助ける、ドキュメントを改善する、Pull Request をレビューする、資金面で支援する――こうした活動も重要な貢献だ。

さらに、特定のテーマに関心を持つメンバーが集まって活動する SIG(Special Interest Group)も紹介された。Atomic SIG や Media & Entertainment SIG は、「AlmaLinux でこういうことをやりたい」というコミュニティの思いから生まれた例だという。

まとめ:AlmaLinux の強さは「OS」だけではない

今回の講演で Vasquez 氏が伝えたかったのは、AlmaLinux が単に「無料で使える RHEL 互換 OS」ではないということだろう。

長期的な安定性を重視する OS そのものに加え、特定企業だけに意思決定を委ねないガバナンス、公開された議論、そしてユーザー自身がプロジェクトの方向性に関われる仕組み。CentOS で経験した課題を踏まえ、「誰かに任せる」のではなく、コミュニティ自身が未来を支える構造を作ろうとしている。

Vasquez 氏が最後に紹介した個人メンバー制度も、その思想を象徴している。コードを書かない単なるユーザーであっても、Foundation に参加することで AlmaLinux の未来に声を届けられる。AlmaLinux にとっての「オープンソースの道」とは、ソースコードを公開することだけではなく、その OS を使う人自身がコミュニティの一員として未来を決められることなのかもしれない。

記事の内容は掲載時のものです。サービスの内容変更や所属・組織変更などにより、掲載情報と現状が異なる場合がありますのでご了承ください。