社会インフラシステムが要求する信頼性を、Linux 搭載 FA コンピュータの冗長構成で確保
事例企業: 株式会社コンテック
業種:製造業 規模:301~2,000人
事例カテゴリ:事業継続 (DR/BCP)
目的: FA コンピュータで社会インフラシステムの可用性向上に貢献
採用製品: MIRACLE CLUSTERPRO X MIRACLE CLUSTERPRO X ウェブサイト MIRACLE LINUX MIRACLE LINUX ウェブサイト
導入前の課題
工場向けコンピュータの用途が、工場の生産ラインだけでなく、AI 推論や大容量データ処理のような高負荷なエッジ処理にまで広がり、高性能モデルと Linux の需要が高まっていた。一方で、Linux の中でも人気があった CentOS のコミュニティによるメンテナンスが終了し、CentOS に代わる Linux が求められていた。また、用途の広がりに合わせて、より高い信頼性が求められていた。
導入の目的・解決手段
AI 推論や大容量データ処理のような高負荷なエッジ処理における Linux 需要に応えるため、FA コンピュータの高性能モデルに「MIRACLE LINUX」のプリインストールモデルを用意した。さらに、高い可用性を求める公共インフラなどの市場に向けて、クラスタリングソフト「MIRACLE CLUSTERPRO X」で冗長化する構成を提案している。
導入効果
ユーザーが求める高性能・高信頼性を、Linux OS とクラスタリングソフトを用いて確保できるようになった。公共インフラのログサーバー事例では、サイバートラストが Linux OS とクラスタリングソフトの設定をまとめてワンストップで支援したことで、100 拠点を超える多拠点に短期間かつスムーズに展開できた。
株式会社コンテックは、工場の生産ラインなどの FA(ファクトリーオートメーション)用途に合わせて信頼性と耐久性を高めた FA コンピュータ「VPC シリーズ」を販売しています。FA コンピュータは現在、エッジ拠点での AI/ データ処理などへと用途が広がっています。用途の広がりに合わせて、高性能モデルや、より信頼性が高いクラスタリング(冗長化)構成の需要が高まっています。コンテックとサイバートラストが手がけた直近の事例では、社会インフラシステムのログサーバー用途として、MIRACLE LINUX と MIRACLE CLUSTERPRO X を導入してクラスタリング構成を実現した FA コンピュータを 100 セット以上導入しました。
FA コンピュータは過酷な現場を想定して可用性を高めている
コンテックは、2009 年から FA コンピュータの VPC シリーズを販売しており、累計で約 4 万台の出荷実績があります。FA コンピュータの特徴は、通常のタワー型パソコンをベースとしつつ、過酷な動作環境で使うことを想定し、耐久性と可用性を高めていることです。
工場においては、生産ラインで使う情報端末や、工場の機械や作業を監視・管理する MES(製造実行システム)などで、FA コンピュータが使われています。また、決済端末など、パソコンをベースとした専用機器を構成する部品としても、FA コンピュータが組み込まれています。
AI や大容量データをエッジで処理する用途では Linux が人気に
FA コンピュータにおける現在のトレンドについて「高負荷なエッジ処理の需要が高まっています」と営業本部 プロダクトソリューション部 マーケティンググループ グループ長 金田健一氏は指摘します。例えば、AI の推論処理※1 や、大容量センサーデータの処理などを、中央のコンピュータに転送せず、拠点や現場に置いたエッジコンピュータで処理する使い方です。
※1 AI の推論処理とは:学習などによって作成した AI モデル(アルゴリズム)を使い、現場のデータを分析したり予測したりする処理のこと
このような負荷の高い処理を実行するためには、高性能なマシンが必要です。このニーズを受けてコンテックは、VPC シリーズに高性能モデルをラインアップしました。
高負荷なエッジコンピュータでは Linux の採用が増加してます。その理由の一つに、Linux にはサーバー向けのソフトウェアや AI 向けの言語 / ライブラリが揃っていることが挙げられます。OS からミドルウェアまで、ユーザー自らカスタマイズが容易であることがその背景にあるようです。
コンテックは、Linux を搭載した高性能モデルの需要を汲むため、高性能モデル「VPC-5000」にサイバートラストの「MIRACLE LINUX」をプリインストールしたモデルを 2022 年 3 月から販売しています。現在では最上位モデル「VPC-7000」にも MIRACLE LINUX プリインストールモデルを追加しています。
MIRACLE LINUX が CentOS 難民を救う
VPC シリーズにおける出荷台数の大半は Windows プリインストールモデルですが、OS なしモデルの出荷台数も 20% を占めています。金田氏は「MIRACLE LINUX プリインストールモデルを用意した背景には、CentOS のコミュニティによるメンテナンス終了を受け、CentOS 難民を救いたいという狙いもありました」と事情を説明しています。
こうした中でサイバートラストは、CentOS と同じ RHEL 互換 OS として「MIRACLE LINUX」を開発・提供しています。2023 年 5 月からは、CentOS の後継 OS の 1 つである AlmaLinux の共同開発にも参画しています。
工場以外の用途でも可用性への要求が高まっている
現在では、FA コンピュータの特徴である耐久性や可用性の高さが、工場以外の用途でも強く求められるようになってきています。「具体的には、社会インフラや医療機器など、普通のパソコンでは可用性に不安がある用途で FA コンピュータが使われています。中でも、交通や通信などの大規模な社会インフラでは、処理能力の高い高性能モデルが採用されています」(金田氏)。
コンテックの FA コンピュータはもともと、RAID 装置を搭載し、可用性を高めています。現在では、もう 1 段階上の可用性を実現するため、HA クラスタ・システムを提案しています。
「FA コンピュータも機械なので、壊れないということはありません。壊れても処理を継続できるように、サーバー機自体を冗長化できるようにしたのです」と、金田氏はクラスタリングを採用した事情を説明しています。
具体的な製品構成としては、MIRACLE LINUX 8.6 をプリインストールした高性能モデル(VPC-5000 または VPC-7000)に、サイバートラストのクラスタリングソフト「MIRACLE CLUSTERPRO X」を組み合わせて提案しています。
直近では、多拠点を抱える社会インフラシステムのログサーバーの用途で、VPC-5000 と MIRACLE LINUX 8.6/MIRACLE CLUSTERPRO X からなるシステムを納入しました。2 台で 1 セット(本番サーバーと待機サーバー)のクラスタリングシステムを、拠点ごとに 100 セット以上配備します。2024 年 4 月現在、順次配備中であり、一部の拠点で運用が始まっています。
OS/ ミドルウェアの設定でサイバートラストが協力
MIRACLE LINUX プリインストールモデルを標準で用意したり、MIRACLE CLUSTERPRO X を導入したクラスタリングシステムを提案したりするにあたっては、「OS/ ミドルウェアを提供しているサイバートラストの協力が大きかったです。OS の導入と設定、クラスタリングの導入と設定をワンストップで支援してもらえました」と金田氏は振り返ります。
「コンテックの場合、ハードウェアについては得意としていますが、OS/ ミドルウェアには強くありません。このため、Linux やミドルウェアをユーザーに合わせて設定するという業務領域については、サイバートラストに依頼しています。こうして、コンテックとサイバートラストの協力体制でユーザーをサポートしています」(金田氏)。
導入企業様のご紹介
コンテックは、信頼性と耐久性が求められる FA(ファクトリーオートメーション)環境に対応した産業用コンピュータを中心に、電子機器を開発・生産・販売しているメーカーです。近年では、デジタルサイネージ、医療、社会インフラなどの市場に FA で培った技術を応用し、幅広い産業に向けて製品を開発・供給しています。 https://www.contec.com/