始まりは 2023 年春、「無難な王道キャラクター」ゆえの葛藤
あるまちゃんプロジェクトが始動したのは、2023 年 3 月のことでした。サイバートラストが開発する Linux ディストリビューション「MIRACLE LINUX」のキャラクター「みらくるちゃん」が AlmaLinux 関連の会議で紹介された際、「AlmaLinux にも独自のキャラクターが欲しい」という声が上がったことがプロジェクト発足のきっかけとなりました。
H さんは打診を受け、そのわずか 3 日後に最初のデザイン案を提出しました。しかし、その当時のデザインは今のあるまちゃんとはまったく異なるものでした。
H:「最初は、AlmaLinuxのロゴのイメージからニュアンスを汲んでキャラクターを起こそうとしていました。ロゴの 5 色を使ったカラフルで賑やかな、いわば『無難な王道キャラクター』でしたね 。 でも、キャラクターに持たせるストーリーがまだ何もなかったので、可愛い『公式キャラクター』としてまとまってはいるものの、どこか面白みに欠けるというか…。どう命を吹き込めば親近感を持ってもらえるのか、すごく悩みました」
"AlmaLinux キャラクター" 初期デザイン案
その後、プロジェクトは一時休止状態となりますが、2024 年に再び動き出します。
「UFO が軒先に落ちてきた!」ぶっ飛んだプロットがもたらしたブレイクスルー
大きな転機となったのは、2024 年 7 月に開催されたサイバートラスト社内のブランディング会議でした。あるまちゃんを使った AlmaLinux の紹介漫画を作ろうという計画に対し、M さんが提案したストーリーのプロットが、停滞していた空気を一変させます。
M:「私が提案したのは、『みらくるちゃんの家の軒先に突如 UFO が落下して、中からスーパーハッカーの宇宙人のあるまちゃんが出てくる』という、ちょっとぶっ飛んだ設定でした。しかもその UFO は AlmaLinux(と似たシステム)で動いていて、落下した UFO の部品を組み立てて OS に AlmaLinux を入れた『メカカーネルくん』を作る、というお話でした」
H:「それを聞いたとき、『これは面白い!』と一気に視界が開けました。きれいにまとまった王道ストーリーよりも、絶対にこっちの方がインパクトがある。すぐにこの路線へ舵を切ってキャラクターをデザインし直すことに決めました」
この大胆な方向転換について、M さんは「OSS の開発に非常によく似ている」と振り返ります。
M:「誰かのアイデアに対して、周りが『それ良いじゃん!』と乗っかり、みんなの熱量でスパイラル状にものが出来上がっていく。あるまちゃんが生まれたプロセスは、まさに OSS の精神そのものだったなと感じます」
コミュニティと同じ、“1人のファン”として
新路線へと舵を切ったあるまちゃんは、デザインや設定などさらに細かなブラッシュアップを重ねていきました。
M:「原案テキストの段階では完全に女の子の喋り方だったんですが、『男の子か女の子かわからないようにしよう』というアイデアが出て、漫画版では性別をあえてぼかす表現にしています」
H:「受取手のみなさんそれぞれの想像にお任せしたいなと思っています。そしてもう一つ、今のあるまちゃんの大切なポイントは、彼女(彼)が『AlmaLinux そのものの擬人化』ではなく、宇宙からやってきて AlmaLinux を好きになっていく『1人のファン』という立ち位置にあることです。コミュニティのエンジニアのみなさんと同じ目線にいるからこそ、親近感を持ってもらえるのかなと思います」
実際に「Interop Tokyo」や「Open Source Conference」といった展示会や OSS 関連イベントであるまちゃんのポスターやノベルティを展開したところ、SNS を中心に「可愛い!」と大きな反響を呼びました。
"あるまちゃん"決定デザイン
M:「2026 年 1 月に開催された AlmaLinux Day Tokyo の懇親会では、あるまちゃんの設定の小話をしたところ、たくさんの人に興味深く聞いていただきました。現在、漫画『あるまちゃんの冒険』は第 2 話まで冊子になっていますが、『早く続きが読みたい』と大変好評をいただいています」
目指すは漫画の完結、そして「アニメ化」へ…!?
インタビューの最後、「今後あるまちゃんで挑戦したいこと」を伺うと、非常に熱い答えが返ってきました 。
H:「まずは、今進めている漫画をしっかりと一通り完成させたいですね 。実は社内でも、あるまちゃんの 3D モデルを作成したり、あるまちゃんを色々な場面で活用していたりする人がいて、キャラクター自身がどんどん新しい一面を持ち始めていて、デザイナーとしてもこれからがすごく楽しみです」
M:「社内でもコミュニティでも、みんながあるまちゃん、そして AlmaLinux に愛着を持ってくれていることが何より嬉しいです。漫画をしっかり形にしたその次の段階としては、ショートアニメ制作とか…夢は大きく、目指していきたいなと思っています」
一人のアイデアにみんなが共鳴し、愛を持って育てられてきたあるまちゃん 。OSS コミュニティとともに歩む彼女(彼)のストーリーは、まだ始まったばかりです。





