製造業や重要インフラで「止まらない」システムを実現する HA クラスタに、CLUSTERPRO が選ばれる理由とは?
ミッションクリティカルな重要システムで CLUSTERPRO が使われる理由
IT システムに障害が発生すると、業務が停止しかねません。特に、ミッションクリティカルな基幹システムは、停止することによってビジネスに与える影響が大きいことから、システムの可用性を高める手段として、HA(高可用性)クラスタリングによる冗長化などのソリューションが必要です。
中でも、製造業や重要インフラ業界は、IT システムに対する信頼性・可用性の要求が大きく、システムの冗長化は必須と言えます。一方で、あらゆる企業が DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、ミッションクリティカルなものを含めたさまざまな業務を IT で実現していることから、HA クラスタリングの需要が広がっています。
HA クラスタリングは、クラスタを構成するサーバー同士が、正常に動いているかどうかを互いに監視し合い、応答が途絶えるとシステムが停止したと見なして、もう一方のサーバーで処理を引き継ぐ仕組みです。サーバーを冗長構成で運用できるため、システムの可用性が高まります。
サイバートラストは、こうした需要に向けて HA クラスタソリューション「MIRACLE CLUSTERPRO X」(CLUSTERPRO)を販売しています。現在、製造業や重要インフラ業界など、ミッションクリティカルシステムの可用性を高めたいお客様を中心に、引き合いが増えています。
そこで今回、20 年以上 CLUSTERPRO 事業に携わり、サイバートラストにおいてエンタープライズ Linux のサービスを手がけている吉田 俊輔に、高可用性 IT インフラの市場動向と、CLUSTERPRO に対する要望の高まりの背景、およびサイバートラストの戦略を聞きました。
DX 推進で IT の利用範囲が広がり、高可用性システムの需要が向上
製造業や重要インフラ業界においてシステムの高可用性ニーズに変化はありますか?
企業では近年、デジタル技術を使って業務プロセスやビジネスを改革する DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されており、IT の利用範囲が以前と比べて広がってきています。これにともない、IT システムに対するサイバー攻撃が増えており、攻撃の内容も高度化しているほか、安定稼働を脅かす要因として、地震などの自然災害も増えています。
このように IT システムを取り巻く状況が変化している中で、特に製造業や重要インフラ業界のような、運用中のシステムが停止することによる損害が大きい業種においては、サービスの可用性を確保するための取り組みが一層必要になってきています。システムの障害から迅速に復旧してビジネスを継続可能にするための対策が求められています。

製造業や重要インフラ業界が抱える可用性の課題を解決する策はありますか?
システム障害や自然災害によってシステムが停止すると、そのシステムに依存している業務が止まってしまいます。IT システムをパブリッククラウド環境に移行することで一定の可用性を確保することは可能ですが、クラウドでも障害は発生するので、企業が求める可用性を満たせるとは限りません。
可用性の課題を解決する施策の 1 つが、HA(高可用性)クラスタリングによってシステムを冗長化することです。サーバーにインストールして使うクラスタリングソフトウェアなら、オンプレミスやクラウドなどの環境を問わず、サーバーの可用性を高められます。
業務停止リスクを避けるうえでは、各種セキュリティガイドラインへの準拠も求められます。例えば、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)」や「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン(NISC ガイドライン)」などがあります。
Linux OS と HA クラスタソフトを組み合わせて提供して長期のワンストップサポートを提供
サイバートラストの HA クラスタ製品は他社製品と何が違うのでしょうか?
サイバートラストの HA クラスタソリューション「MIRACLE CLUSTERPRO X」(CLUSTERPRO)は、NEC の HA クラスタリングソフトウェア「CLUSTERPRO X」と、サイバートラストの Linux OS(「MIRACLE LINUX」または「AlmaLinux」)を組み合わせた、動作検証済みのパッケージ製品です。オンプレミスやクラウドなど環境を問わず利用できます。
他社のソリューションとの一番の違いは、OS とクラスタリングソフトウェアを一体でサポートできることです。また、CLUSTERPRO を導入することで、各種セキュリティガイドラインへの対応と長期保守も実現できます。
NEC の HA クラスタリングソフトと Linux OS を組み合わせるメリットは何ですか?
OS とミドルウェアの組み合わせという観点では、クラスタリングソフトウェアの高可用性機能と Linux の柔軟性・セキュリティ性のメリットが得られることで、停止することが許されないミッションクリティカルなシステムを、効率よく守ることができます。実際に、多くのお客様のミッションクリティカルシステムを守っています。
これらを組み合わせて利用可能なことのメリットは、単一の高可用性ソリューションとしてサポート窓口を一元化できることです。問題が発生した場合でも、OSとクラスタリングソフトウェアの問題を切り分けることなく、1 つの問題としてまとめて問い合わせ、回答を得ることができます。両方のサポート窓口に対して個別に問い合わせるといった必要がありません。
セキュリティガイドライン対応と長期保守を実現するために、どのような取り組みを行っていますか?
NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)や経済産業省のガイドラインに基づいたセキュリティ対策を製品に組み込んでいます。また、Linux OS 部分だけでなく、Linux OS と HA クラスタリングソフトウェアを合わせた一体型の高可用性システムとして、標準で 10 年間の長期にわたって一貫したワンストップサポートを提供しています。
基幹業務から店舗システムなど幅広い用途で障害発生時の復旧時間が短縮
CLUSTERPRO の事例にはどのようなものがありますか?
製造業を含め、大手企業が導入してくださっています。それぞれの企業が、生産管理システムなどの社内システムから、顧客接点となる社外向けシステムまで、幅広いシステムの可用性を高めています。通信事業者も各社が採用してくださっており、災害時の迅速なシステム復旧などに役立てています。

例えば、大手通信会社は、CLUSTERPRO で数百台規模のサーバーを守っています。スーパーマーケットや公共サービス企業のように、各店舗でエッジサーバーを運営している形態のお客様も、大量の店舗サーバーを守る用途でクラスタリングソフトウェアを使ってくださっています。
大量の同機能のサーバーを守る用途では、複数台のサーバーをクラスタリング構成で導入するのではなく、サーバー 1 台で高可用性ソフトウェアを動作させる簡素な使い方が適しています。MIRACLE CLUSTERPRO には、このための「MIRACLE LINUX HA」と呼ぶ製品があります。サーバー機の稼働状況を自己監視し、障害発生時はアプリケーションの再立ち上げや OS の再起動などによって復旧する仕組みです。
一方、ミッションクリティカルな基幹系システムのように、サーバーが落ちて業務が停止することの影響が大きいケースでは、遠隔地に DR(災害時復旧)サイトを構築し、広域で障害対策をとっているお客様もいます。サイバートラスト自身も、Linux サービスの可用性を高めるため、東京と遠隔地で DR(災害時復旧)システムを組んでおり、障害発生時には自動的に遠隔地のシステムに切り替えて業務を引き継げるようにしています。
このほか、アプライアンスサーバー製品の OS として CLUSTERPRO を組みこんでいるベンダー様もいます。このように、幅広い用途と分野で使われています。
CLUSTERPRO 導入後、どのような効果や改善が期待できますか?
HA クラスタリングによって、システム障害が発生した際に、復旧までに要する時間を短縮できます。この復旧は自動で行われるので運用コストも削減できます。例えば、障害発生時に情報システム担当者が呼び出される、といった状況を減らすことができます。
システム障害のほとんどはハードウェア障害であり、運用中に自動で復旧機能が働くことはよくあります。CLUSTERPRO のログ情報を確認すると、ストレージ、ネットワーク、電源など、システムのどの部分に障害が起こったのかが分かります。
CLUSTERPRO で検知できる障害の数は、数十に及びます。ハードウェア障害のほか、カーネルの処理が動いているか、Web サーバーやデータベースなどのアプリケーションが応答するか、などをチェックしています。サーバー内部での監視だけでなく、2 台のサーバー間で時間内にリクエストに応答が返るまで見極めています。
HA クラスタを導入する際には、お客様のシステム環境でどのような障害が起こり得るかを確認しておく必要があります。例えば、DR サイトのように広域にまたがったシステムでは、ネットワークを介してサーバー同士が監視し合うため、サーバーだけでなく通信機器や通信回線などのネットワークの冗長化も必要です。
サイバートラストは、お客様のシステム環境に適した形で CLUSTERPRO を導入できるようにコンサルティングも提供しています。疑似的なシステム障害のテストを実施するなど、ネットワーク設計を含めてサポートしています。
今後は AI/GPU サーバーの安定稼働に向けた監視機能を追加
今後、HA クラスタ製品をどのように進化させていく予定ですか?
GPU を搭載した高負荷な AI システムを安定稼働させる用途に向けて、GPU の監視機能を追加することを検討しています。GPU の温度が上がってシステムが壊れる、といったことがありえるので、運転負荷の抑制や再起動、他システムへの切り替えなど、GPU サーバーにかかる負荷を抑える機能を考えています。
また、CLUSTERPRO のマニュアルや FAQ(よくある質問と回答)を検索して問い合わせに回答できる機能を、サイバートラストのサポートサイト上で提供することを検討しています。現在はメールを介して問い合わせに対応していますが、これを自動化できるようにして、お客様の利便性を向上させます。
パッケージ製品として組み合わせて提供する Linux OS も、順次更新します。現在は、AlmaLinux 9 と MIRACLE LINUX 9 から選べるようになっています。2025 年度後半には、AlmaLinux 10 を組み合わせたした製品も選べるようにする予定です。
市場のニーズや技術の進化に対して、どのような戦略を考えていますか?
各種セキュリティガイドラインへの対応を重視した製品開発と、SI ベンダーなどパートナー企業との連携による新規市場の開拓を進めていきます。また、製造業や重要インフラ分野に特化したソリューション提案を強化することによって、持続可能な成長を目指します。
製造業や重要インフラ業界のお客様に向けて、サイバートラストのソリューションをどのように活用してほしいと考えていますか?
まずは、CLUSTERPRO のことを、製造業や重要インフラ業界のお客様に知っていただきたいと思っています。CLUSTERPRO は、単なる障害対策だけでなく、企業の事業継続性を支える重要な IT システム基盤です。安心・安全な IT インフラを実現するために、ぜひご活用ください。
※ 記事中の情報は、2025 年 5 月掲載時点のものです。